| ユーザーページ | 隠岐汽船株式会社 |
| スマウト導入 | 2025年12月〜 |
| ご担当者さま | 採用担当 松澤拓也さん |
島根県・隠岐諸島と本土を結ぶ隠岐汽船株式会社は、1895年の創業から、130年以上の歴史を誇るフェリー会社です。長年地元の人材に支えられてきましたが、近年は深刻な船員不足に直面していました。この課題に挑んだのが2025年11月に海士町へ移住した松澤さんです。
求人広告の営業・ライターとして約4年の経験を活かし、さまざまな切り口でのプロジェクトの継続的な発信、スケジューラーを活用した面談の効率化、そして職場のリアルな雰囲気を体感してもらうための体験乗船を軸に採用活動を再構築。その結果、82件ものエントリーを獲得したほか、同社の歴史でも異例となる女性2名の入社が決定しました。
かつての隠岐汽船は、大きな採用コストをかけなくても、地元の高校生や船乗りに憧れる島外からの直接応募、リファラルなどで自然と船員の確保ができていました。しかし、それも5年以上前までの話。船員のなり手不足や、地元での認知やイメージの変化から、「本腰を入れて動かなければ、船員不足を解消できない」という危機感を抱く段階に至っていました。
担い手不足解消のため、採用担当の松澤さんは、求人検索サイトのIndeedと並行してスマウトを導入しました。
「全国からのIターン訴求と地元での採用訴求でアプローチを明確に分けたいと考えていました。その中で地域での暮らしに関心がある層と一番相性がいいのがスマウトだったんです」と松澤さん。スマウトをサービス開始当初から知っていた松澤さんは、迷わず導入を決め、移住直後の12月から運用を始めました。
最大の狙いはこれまでにない規模の「母集団形成」です。まずは「未経験・無資格の方」にターゲットを絞り、募集をスタート。さらに運用を進める中で 専門知識が求められる機関部とそれ以外の職種を切り分け、途中から「航海士・事務」と「機関士」でターゲットを分けるなど、状況に応じた柔軟なアプローチを展開していきました。
隠岐諸島、とりわけ海士町・西ノ島町・知夫村の強みは、移住者を温かく受け入れる風土にあります。ここには20代の若者が年間200人ほど訪れる「大人の島留学」などの取り組みが定着しており、島民にとって新しい人を迎えることは日常の一部。地区の祭りや神社の清掃、野球や綱引きなど交流の機会も多く、松澤さん自身「意外とすんなり馴染めた」と振り返ります。
一方で大きな課題となっていたのは「住まい不足」です。特に海士町では移住希望者が多い一方、空き家や賃貸物件が限られており、住居の確保が難しい状況にありました。
そこで隠岐汽船では新しく入社するメンバーに対し島と本土のどちらで暮らすかを柔軟に選べる体制を用意。本土側には鳥取県境港市に社宅を確保することで、この問題を解決。今回入社が決まった2名も、この社宅に入居する予定です。
運用の一つめの柱は、プロジェクトの「量」と「切り口」の工夫です。
今回利用したプレミアムプランでは、プロジェクト掲載数の上限がないため、月1回〜2ヶ月に1回のペースでコンスタントに更新。通常の求人情報だけでなく、先輩船員のインタビューや汽船の仕事内容を紹介する読み物など、切り口を変えた発信を重ねました。
特に反応が大きかったのは事務部門の求人です。「フェリー会社の事務職ってどんな仕事だろう?」という興味を引くため、入り口は極力柔らかく構成。「仕事の厳しさはその後の面談でしっかり伝えればよい」という割り切りが功を奏しました。プロジェクトのメイン画像は、Canva等を使い作成。写真撮影には、島で暮らしながら働く「島留学」で滞在していた、プロカメラマンの大学生を起用。特に、女性事務員を写した一枚をメイン画像に設定した記事は、多くのユーザーから「興味ある」を集めました。
二つめの柱は、スケジューラーを使った効率的な面談調整です。
新規スカウトはほぼ使わず、「興味ある」を押してくれた方のうち条件に合う方へ1日以内にメッセージを送信。ポップアップから押した方も想定し、「船の会社だけれど、島の暮らしや物流、インフラを支えている会社です」と一言添えたうえで、Googleカレンダーと連携した予約リンクを送る仕組みを整えました。「面接というより、リアルな仕事と暮らしの話をするだけ」というカジュアルなスタンスを徹底し、心理的ハードルを下げる工夫は導入当初から貫いています。
そして三つめの柱が「1泊2日の体験乗船」です。
事務部なら実際の接客風景、甲板部なら最も揺れる操縦室の雰囲気を、半日かけてじっくり体感してもらいます。実際の現場のリアルを肌で感じてもらった翌日に本社で最終面接を行うという、納得感の高い選考プロセスをつくり上げました。
運用開始から7〜8ヶ月で、エントリーは82件に到達。人気記事の「興味ある」数は180件、160件に達するなど、大きな反響を呼びました。さらに体験乗船と最終面接のために現地を訪れた求職者は約10名で、そのほとんどの方に内定を出す結果となりました。そして今回入社が決まったのは、事務部の女性2名です。
1人目は神奈川県出身・東京都在住の26歳。前職では営業と施工管理を兼務しており、「働き方を見直したい」と考えていた中で今回の募集に出会ったのだそう。飲食店でのアルバイトの経験を生かせるまかない作りや接客業務、社宅完備という条件に惹かれたといいます。
もう1人は埼玉県在住の24歳。ハワイへの2年間の留学経験があり、「英語活かせる接客業」を軸に仕事を探していました。当初の意欲は高くありませんでしたが、松澤さんが帰省の際に対面で面接を実施。近年インバウンド客が増加傾向にある隠岐では「まさに英語での接客スキルが求められている」と伝えたことで関心を深めていきました。
隠岐汽船の130年を超える歴史の中で、女性船員は過去4人だけ。そこに2名が一度に加わることは極めて異例です。「女性が加わることで会社の雰囲気も明るくなりますし、今後のIターン採用に向けた訴求力にもなります」と松澤さん。
松澤さん自身、埼玉県秩父市、マレーシア、そして隠岐と、人生で3度の移住を経験してきました。多様な生き方やライフスタイルを選ぶことが当たり前になりつつある今、移住をする上で欠かせないのが「住まい」と「仕事」です。「この街が好きで移住してみたいけど、仕事がないと諦める人は本当に多いんです。移住へのハードルとなるその最後のピースを魅力的な求人という形で届けてくれるスマウトには、非常に大きな価値を感じています」と語ります。
今回の採用の一方で、航海士や機関士の募集は現在も続いています。特殊な環境である「船の仕事」は、求人媒体上ではイメージが湧きづらく、どうしても「難しそう」という印象が先行してしまいがちです。だからこそ今後も、現場で働く先輩社員の声や日常の様子を、さまざまな角度からプロジェクトにして届け続けること。そして体験乗船を通じて実際の職場を感じてもらう。この地道な積み重ねの先に、次の出会いがあると信じ、松澤さんの挑戦は続いていきます。
「手間のかかる日程のすり合わせを省き、スマホで面接を予約できる時代です」と松澤さん。
受け入れ側にとってオンライン面談を1回挟むことは一見手間に感じられるかもしれません。でもそのハードルを少し下げるだけで、求職者との接点は確実に増やすことができます。「スケジューラーの導入や、まめにスカウトメッセージを送ること。そうした工夫を重ねるだけで、非常にいい人と巡り合える可能性は大きく広がります」。
隠岐汽船の取り組みが示すのは、特別な裏技ではなく、基本の積み重ねが結果を生むということです。記事を一本で終わらせず、角度を変えて更新し続けること。反応にはすぐ応え、会うまでの手間を減らすこと。そしてイメージの湧きにくい仕事ほど、現地で体感してもらうこと。「船の仕事」という高い壁の向こうから、130年の歴史に残る女性2人を迎えた取り組みは、専門職の採用に悩む自治体や事業者にとって、大きなヒントになるはずです。