| ユーザーページ | 香川県三豊市 Private Chill Base たまて |
| スマウト導入 | 2024年6月〜(当初はトライアルプラン。以降はスポット的に利用) |
| ご担当者さま | 運営者 山田 宗明さん |
香川県三豊市・荘内半島は、瀬戸内海の穏やかな景色が広がる、原風景の残るエリアです。
海と山が隣り合わせにあり、雑踏が少なく、静かな時間の流れが感じられる土地なのだとか。
一方で、都市的な利便性は高くありません。交通の便も決して良いとはいえず、「なんとなく」訪れるというよりは、意思を持って足を運ぶ人が多い地域です。
そんな荘内半島にあるゲストハウス「Private Chill Base たまて」は、宿泊拠点でありながら、地域の人や風景と出会う“入口”でもある場所。シェアハウスに滞在しながら宿の運営を手伝ってくれるスタッフを、スマウトを通じて募集しています。
導入前の課題は、「 宿や地域のリピーターや移住につながる関係づくり」でした。
一般的なアルバイト募集を行うと、どうしても労働時間を売買する割り切った関係になりがちです。しかし、荘内半島の経済圏や暮らし方は、都市部の感覚とは少し異なり、お手伝いをしているつもりが逆に学ぶことの方が多かったり、金銭的ではない豊かさを感じることが多いと山田さんは言います。
シェアハウスの滞在費を無料にする代わりに、ゲストハウスの運営を1日数時間サポートしてもらい、余白の時間で地域の方と仲良くなったり、お気に入りの場所を見つけたり。報酬として誰にでもわかりやすい価値であるお金を渡すのではなく、その人にとって価値があると思うものを見つけられる環境を提供する。このスタイルに共感してくれる人でないと、お互いにとって無理が生じてしまいます。
山田さんがスマウトで実現したかったのは、
スマウトのユーザーの多くは、地方や地域での暮らしへの興味関心を持つ人たち。「たまて」が大切にしている価値観に共感してくれる人が応募してくれるのではないかと考え、まずは無料で記事を掲載することにしました。
荘内半島は、海路が人や物の移動手段だった頃は山口県の下関と並ぶ四大関所と呼ばれた「関の浦」があるほどの海上交通の要衝でした。陸路が中心となった今でも、かつての面影を残したのどかな集落が息づいています。
一方で、弱みは都会的な“便利さ”がないこと。交通アクセスは決して良くはなく、コンビニやスーパーまでは車で20分ほど。徒歩圏内で現金が必要になる場所は飲み物の自動販売機程度です。
それでも、あえてこの場所を選んで来てくれる人がいる。だからこそ、ある程度の不便を知恵と工夫で楽しみながら生活ができる「価値観が近い人と出会えるかどうか」が何よりも重要なポイントになっていました。
スマウトの募集記事で山田さんが意識しているのは、地域の魅力だけでなく、弱みや不便さも含めて正直に書くこと。
「海も山もあって景色が最高です」といった表面的な魅力だけでなく、「便利ではない」「収入面では工夫が必要」といった点もあえて記載するのだとか。
そうすることで、「それでも行きたい」「むしろそういう場所を探していた」という人だけが残ります。結果的に、記事そのものが価値観のフィルターとして機能し、宿や地域と相性の良い人とつながれるようになりました。
世間の価値観の変動により、悪く言ってしまうと「時代に取り残されたまち」かもしれません。そんな荘内半島を、山田さんは「世界の見え方が変わる場所」と話します。
他にも、「古民家のリノベーションに興味のあるかた」「農業や漁業に興味のあるかた」「アートの創作に興味のあるかた」といった“どんな人に来てほしいか”という思いや、「徒歩1分の海で釣りや海遊び」「狩猟体験(イノシシ肉あります)」など、“ここでどんなことをして過ごしているか”という具体例も記載することで、記事を読んだ人が「自分に合うか」をイメージできる設計になっていることにも注目です。
さらに、実際に記事を読んで宿を訪れた人に対して、「滞在で終わらせない」のも工夫のひとつ。
まずは短期の滞在スタッフとして受け入れつつ、現地での体験や人との出会いを通じて、関係人口や移住へと広がるような導線を意識して運用しています。
2024年6月25日にスマウトで初めて募集記事を掲載したところ、想像以上の反響がありました。
滞在スタッフとして、首都圏や関西圏などからも、学生や社会人、アクティブシニアなど、さまざまな背景を持つ人が荘内半島を訪れるようになったといいます。
その中から、なんと実際に三豊市へ移住した人が3名。
移住後は、地域活動に参加したり、空き家の相談を受けたりと、“宿の手伝い”の枠を超えた関わり方が自然と生まれていきました。
また、宿に滞在したアーティストの方が、地域の建物の壁にウォールペイントを実施したり、山田さんが所有している観光船にペイントをしてくれたり。荘内半島が“アート”の秘密基地としても動き始めています。
スマウトを通じて「たまて」にやってくる人は、「都会の便利さ」ではなく、「少し不便で、でも心が落ち着く場所」を求めて来る人が多いのだとか。滞在という短い時間から始まり、リピート、関係人口、そして移住へ。その連なりが少しずつ形になってきています。
山田さんがスマウトに対して特に価値を感じているのは、「価値観の近い人が集まってくれること」だといいます。
他の求人媒体ではなかなか出会えなかった層からの応募があり、“滞在費を対価とした働き方”や、“地域に入る入口としての宿”というスタイルにも、自然と共感してもらえるユーザーが多いと感じているそうです。
今後は、廃校をリニューアルしたキャンプ場のプロジェクトなど、新しい場づくりにも取り組んでいく予定です。
その立ち上げに関わるメンバー募集や、初回モニターの受け入れにもスマウトを活用し、長期的に地域に根づく仲間と出会っていきたいと考えています。
「都会の便利さとは真逆だからこそ、来てくれる人の意思が強いんです。不便さも含めて正直に伝えることで、価値観の近い人にだけ届きます」。山田さんはそう話します。
きれいな部分だけを見せるのではなく、その地域ならではの課題や、ちょっとした不便さも含めて発信する。
それによって、「ここに行きたい」「この場所に関わりたい」と思ってくれる人と出会えるのだとか。
香川県三豊市・荘内半島の取り組みは、“地域のありのままを言葉にすることが、結果的に一番強い採用戦略になる” ということを教えてくれます。
滞在から始まる小さな一歩が、やがて地域の未来を支える人材との出会いにつながっていく。スマウトは、そんな出会いの場として活用されています。