| ユーザーページ | とくのしま伊仙まちづくり協同組合 |
| スマウト導入 | 2022年11月〜 |
| ご担当者さま | 事務局長 大保健司さん |
鹿児島本土から約500km離れた離島、徳之島・伊仙町。
人口約5,500人のこの町で、いま「特定地域づくり事業協同組合」という新しい働き方が始まっています。
「特定地域づくり事業協同組合」は、地域企業1社では難しい『正社員雇用』を、企業どうしが連携して実現する組織です。マルチワーカーとして採用されると、地域のさまざまな業種の企業や法人などで働くことになります。地域を支えるさまざまな現場で力を発揮することで人手不足の解消に寄与する一方、働き手にとっても「年間を通じた安定収入」を得ながら「島内にたくさんの顔なじみができる」という利点も。スマウトではこれまで70を超える特定地域づくり事業協同組合にプロジェクトを掲載いただいてきました。
とくのしま伊仙まちづくり協同組合に所属するマルチワーカーの主なフィールドは、農業や保育の現場、学童など多岐にわたります。離島という立地ゆえに移住希望者との接点が少なく、認知拡大や対面イベント出展のコストに悩んでいた同組合。2022年からスマウトを活用してオンラインで地域の魅力を発信し始めると、状況は一変します。
コツコツとプロジェクト掲載を重ねた結果、特定地域づくり事業として8名を採用、採用にいたらなかったもののご縁があり移住した方も含めると10名以上が移住という大きな成果を生み出しました。オンライン運用を軌道に乗せた秘訣や採用後の様子を、事務局長の大保(おおぼ)さんに伺いました。
とくのしま伊仙まちづくり協同組合が、特定地域づくり事業の担い手となる「マルチワーカー」の採用に向けてスマウトの活用をスタートしたのは2022年のこと。しかし当時は、そもそも移住希望者と地域との間に「接点がない」ことが最大の壁となっていました。
行政のPRだけでは伝えきれない島の暮らしを届けようにも、対面型の移住フェアは1回あたりの出展料がおよそ20万円。さらに職員2名を現地へ派遣すれば渡航・滞在費を含めて50〜60万円ものコストが発生します。本土から約500km離れた徳之島にとって、これは決して軽い負担ではありませんでした。
「対面イベントに頼らなくても、自分たちの言葉で地域の魅力をすぐに届けられる。スカウト機能を使えば、一人ひとりと気軽につながることができる。そして何より、コストパフォーマンスが高い。スマウトに惹かれたのはまさにそこでした」と大保さんは振り返ります。
徳之島は世界自然遺産にも登録された、豊かな自然に囲まれた美しい離島です。人口約5,500人という町の規模ならではの地域との温かなつながりがあり、仕事以外の場でも住民同士が自然に顔を合わせる機会が多く、この環境こそが移住者を孤立させない土壌になっています。
しかし、鹿児島本土から約500km離れた立地は、知名度という点では大きなハンデ。また、このまちが切実に求めているのは、観光業よりも農作業の補助や保育・介護など地域での暮らしの基盤を支える仕事の担い手でした。
豊かな暮らしを営む土壌はあるものの、移住希望者に「まず島を知ってもらう」入り口をどう作るか——それがこのまちにとって長年の課題だったのです。
スマウトに掲載するプロジェクトの運用は、大保さんと文章を書くのが得意な奥様の2人体制。
当初は「マルチワーカー募集」という求人色の強い記事中心でしたが、反応を見ながら「離島×介護職」「離島×保育職」など、職種ごとにプロジェクトを細分化させるスタイルへと進化させていきました。
また、他の地域人気プロジェクトの構成を参考にしながらも、「自分たちの地域ならどう表現するか」など、徳之島ならではの独自性を掛け合わせた発信を徹底。
結果、平均40-50件という、高い興味ある数を安定して獲得できるようになりました。
またスカウト送信では、相手のプロフィールや過去にどのプロジェクトに「興味ある」を押しているかのといった履歴を照らし合わせ、地域の仕事とマッチしそうな人を絞り込む「1本釣り」スタイルを徹底。
「例えば“自然の中で保育がしたい”という保育士さんには、私たちのまちならこういう保育ができますよと具体的に返信します」と大保さん。一人ひとりに合わせて文面を細かくカスタマイズし、多忙な中でもできる限り即レスすることを心がけ、オンライン面談後には「1回島に行きます」という返事を8割ほどの確率で引き出していると言います。
さらに移住相談・仕事の紹介・空き家バンクの運営までを1つの組織でワンストップに担っているのもこの組合の大きな強み。
移住後は、仕事面だけでなく、ゴミ出しのルールから物件の紹介、体調を崩した際にはおかゆを届けるなど、暮らし全体に寄り添う細やかなサポートを継続。この手厚い伴走体制が、移住者の安心と地域への定着を支えています。
特に活躍している移住者を尋ねてみると、「そんなの全員!選べない!」と言いながらも特に印象的な二人のエピソードをご紹介いただきました。
一人目は、これまでさまざまな仕事を経験してきた40代男性。
履歴書だけでは見えない人柄や可能性を、面談を通して感じたことが採用の決め手となりました。マルチワーカーとして働く中で初めて子どもと関わる現場を通じ、「子どもと接する喜び」に目覚め、資格を取得するまでに変化したのだそう。今では学童保育の仕事に就き、集落に伝わる伝統芸能の担い手にもなっています。「面接や履歴書だけで人の可能性は分からない。」と振り返ります。マルチワークで島と関わりながらやりたいことを見つける、大保さんが理想とするマルチワーカーです。
二人目の事例は、北海道生まれ・育ちの24歳女性のエピソード。彼女はなんと島に一度も足を運ばないまま、愛車とフェリーを乗り継いで移住してきました。
スマウトで出会ってから移住するまでの約1年半、大保さんは半年ごとに近況を尋ねるメッセージを送り続け、関係を育てていったといいます。現在は毎週のように海に潜って貝や伊勢海老を採り、集落の祭りにも参加する日々。この暮らしぶりは鹿児島県からも注目され、県の移住者紹介にも取り上げられたほど。実際、視察なしでの移住は全体の4〜5割にのぼり、対面の視察を経ずとも「行きます」と決断する人が一定数生まれているのが、この組合の採用の特徴です。
大保さんが強調するのは、「移住は仕事だけで決まるものではない」という視点です。
暮らしの環境が大きく変わることに不安を抱える移住検討者にとって、家、仕事、そして人との繋がりが揃って初めて、移住は現実的な選択肢になります。
だからこそ同組合は、プロジェクトの掲載や面談の段階から仕事の内容だけでなく、暮らしの手触りまで丁寧に伝えることを大切にしてきました。「採用してからがスタート。就業規則には書かれていない暮らしの部分まで寄り添う気持ちを持つこと」だと大保さんは語ります。
求人媒体としてスマウトを使う自治体・企業に向けて、大保さんはこう投げかけます。
「地域に人を呼びたいなら、まずは地域のファンを増やすこと。そして心をこめて応募者との接点を大切にすること。採用の成功は、その先に自然とついてくるものだと思います」
仕事・暮らし・人との繋がりを誠実に紡ぎ続ける大保さんたちの運用方針が、受け入れ側にとっても、移住者にとっても、島にとっても三方よしとなる移住が実現している秘訣なのではないでしょうか。