なぜ2018年、SMOUTを立ちあげたのか。

2018年6月4日に移住スカウトサービス「SMOUT」をリリースしました。それから約半年。SMOUTを活用して地域に足を運んだ人は……人数は正確にはわかりません。でもSMOUTをきっかけに地域の関係人口になった人、地域に移住をした人が出てきました。

移住の領域で事業をつくろう。2017年秋、カヤックLivingの設立時に決まっていたのはそれだけ。そこから、なぜSMOUTを立ちあげたのか。私たちが「移住」というものをどう捉えたか。まちのコミュニティに、まちづくりに参加するきっかけをどうつくりだしたかったのかをお話します。

移住のハードルは何か?

「移住」。これはここ数年、私自身も関心を寄せていたキーワードです。SuMiKaというライフスタイル志向の人が集う家づくりのサービスに長年関わっていたこともありますが、この数年、ライフイベントのタイミングで、今まで住んでいた地域とはまったく別の地域へと移り住む人が増えていることは感じていました。我が家も移住を考えていたりします(うちは夫の事情で海外なのだけど。その話はまたいつか)。

移住が普通のことになる、そんな予感はしていたから、自分の身のまわりにいるオフィスの同じ島にいるような人が、移住を考えたときに訪れる場所をつくりたいと考え、ユーザーヒアリングも実施しました。そこでわかったことは、移住は100人いれば100通り。移住の理由も、場所選びの基準も、タイミングも、人それぞれ。ましてや家族がいれば、嫁ブロックなど家族の合意形成もまた難しく、パッケージ化はできないことは至極当然でした。

私たちが想定した移住のハードル(つまり私たちがサービスで解除するもの)は3つ。「仕事」「住まい」「人とのつながり」。

自分が移住事業をやることになるなんて予想だにしなかった5年前。知人が突然、神楽坂の立派なマンションから八ヶ岳のトレーラーハウスで暮らすと移住しました。その時、彼女は「以前から移住は考えていたんだけど、3家族知り合いができた場所に移住するつもりだった」と。その話がとても印象に残っていました。

それがあったからなのか、「人とのつながり」を決め手にする、これはあっさりと決まりました。人と人とを繋ぐこと、そしてこれまで会った移住者は、最初か最後に、その土地の人に「来なよ!」と誘いを受けていること、そこから「スカウト」というアイデアは生まれました。(その5年前移住した知人はいま、このメディアの編集長です)

「でしリスト」にヒントを得た、ピースを埋めるマッチング

事業プランニングに動いていた当時、トランジションタウンの街づくりでよく実施されるワークショップがあるという話を聞きました。「でしリスト」と呼ばれるそれは、「で」きることと「し」て欲しい事 を参加者が交換しあい、お互いに、これできるよ!やってあげるよ!と交換しあっていくもの。そこに対価は発生しない。これによって信頼を深め、一緒の場所で生きるモノとして生活と場を共有しながら、その輪が広まっていく。

ここに貸し借りの数値化がなされたものが、いわゆる地域通貨となっていると考えていいのかもしれません。

この「できること」と「してほしいこと」を繋げて、信頼のもと一緒に何かをつくりあげる。「できること」と「してほしいこと」は時に自分の家のことであるだろうけど、それが「まち」のためを考えてあげたとしたら、そのまちは市民が自発的に協同で何かを生み出していくまちになるはずです。まちを一緒につくる上で、この手法はとても重要な要素なのではないかと考えました。SMOUTの地域が来て欲しい人、やって欲しい事をプロジェクトとしてあげ、参加する地域に行きたい人は自分のできることをプロフィールで開示する。それはこのワークショップの話が背景にあります。だから、プロジェクトはできあがったものではなく、どこかひとつのピースが欠けたもの、それが埋まったら完成するようなものにして欲しいと思っています。観客としてできあがったものをみるよりは、足らない部分を補って、共創するつくり手になることが、いちばんその地域のことを知る、地域に馴染むきっかけとなるからです。

本当にゴールは移住でいいのか?

移住に関して調べていって気づいたのは、年間移住者は平成27年度に24万人(総務省「田園回帰に関する調査研究報告書」より)であるということです。この報告書によると下降傾向にあります。日本の人口は減少していくなか、都市部の過密を緩和し、地域に人を送るにしてもトップラインが限界にあるわけで、24万人(そこから多少増えるとしても)を取り合う構図に、途中から疑問を抱きはじめたのも事実です。

地域の未来は移住を受け入れ、定住人口を増やすことにあるのだろうか?日本中で奪い合いしているようなもので、結局はプラスマイナス1なわけで。人の流動性を高め、いろいろな地域によいタイミングで貢献していく形(税収の話はさておき)を誘発するのも、SMOUTの役割と考えました。そこで「関係人口」の考え方を取り入れることに決めたのです。

関係人口。移住ローカル界隈のひとの間では一般化しているけど、まだその他のひとはほぼ知らない言葉。定義もぼんやり(はい、私たちも定義は?と調べましたから笑)、人口なのに数字にも表れていません。

関係人口を可視化したい!数値化したい!

それは、これから重要な指標になるという直感と、他に誰もやっていないから!面白そう!それだけの事だったけど、私たちは、ここにこだわったのでした。

そこで生まれたのが、「ネット関係人口」という言葉。アナログのところ全部を数値化するのは難しいから、ネットに限ろうって。ネットは関心を寄せやすいメディアだからいいはずだと。そして、人口の多い地が有利にならないように調整しながら、ネット上で拾える数字を拾い集め、SMOUT経由の交流、関係人口(行ったとか移住したとか)も徐々に加えながらいまも、アルゴリズムを調整しながら、ここの算出にはチャレンジ中です(使用するデータが加わったりしたときにはTwitterやサイト上で告知しています)。

いま、SMOUTは移住スカウトサービスと謳っています。それは消費者から見た時にやはりわかりやすいアクションであるから。でも必ずしも、移住だけがハッピーな未来とは私たちは考えてはいません。地域に移住だけがSMOUTのゴールではなくて、地域と関わり、まるでふたつめ、3つめのホームタウンであるような地域が増えて、「ただいま!」と帰られる場所がつくれるのもいい。旅人のように、たくさんの地域を巡って見る移動式のそのなの通りの「移住」もいい(このメディアのロゴはその意味を込めて、つくっている)。

関係する地域を増やしていけるサービスであって欲しいとも思っています。(ひょこっと、タグラインが移住スカウトサービスじゃなくなっているかも!)

ちなみにネット関係人口ランキングおもしろいよね!とこれ素敵とばかりにプレスリリースを発表したけど、ほとんど反応が皆無でした。関係人口という言葉の周知度をよく理解するできごとでした。が、ここはしつこくやり続けると決めています(笑)。

「地域づくりは三位一体」

これはカヤックの「地域資本主義」における考え方です。行政でできること。企業ができること。住民ができることは違う。みんなが同じ方向を向いて、同じ資本を盛り上げることを目標に動く地域がいい。そして外から見たときに、やっぱり自治体、そこの会社、人は知りたいよね。と、だからSMOUTは、行政も、企業も、人も、地域の人として参加できるようになっています。地域のページを見たら、どんな人がどんな活動をしているかわかるように。その人の視点で地域が語られていると面白い。

最後に個人的に願っていること。

地域にPRの視点がうまれるサービスにしたい。

カヤックLivingをやる前、私はPRを専門にして仕事をしていました。当時から自治体のPRって面白そう。と思っていたわけですが、その理由は、自治体、地域にはPR、ブランディングという考え方がまださほど定着していないと感じていたから。

ターゲットを決めてメッセージを発信することも、的を絞って差別化していくことも、自ら発信してブランドをつくっていくことも、継続して積み上げていくことも。そんなPRの基本を、体感できる、実験できるプラットフォームにもしたいと思いました。

だから、地域のひとには、自らアカウントをつくって、何を発信すればいいかを(一緒に集った隣の自治体の青い芝を見ながら)よくよく考えて、地域で話し合って合意を得て(企業でも社内調整が広報はいちばん大変!)、発信をして反応を体感して(興味ある!という反応ですぐにわかるよ)、どこで勝負するかを調整して、そして中長期的にメッセージでユーザーとやりとりをしながらリレーションをつくっていく。そんなPRのツールのひとつになればいいと願っていたりもします。

皆さん、どうぞSMOUTを使ってみてください。

そしてSMOUTのサービスづくりに関わりたい人がいたら声をかけてください。

移住スカウトサービスSMOUT

文 カヤックLiving代表 松原佳代

SMOUTユーザー限定記事、ただいま準備中!

ABOUTこの記事をかいた人

松原佳代

1979年生まれ。2005年に面白法人カヤックに入社。広報および企業ブランディングを担当する傍ら、アート、住宅関連のマッチングサービスの事業責任者をつとめる。2017年9月より、株式会社カヤックLivingの代表取締役を兼任。暮らし、住宅、移住をテーマとする事業を展開する。1歳、4歳の男子ふたりの子育て中。鎌倉在住。