地方起業こそが、最強のビジネスモデル!藤野英人さん、柳澤大輔さん、中川直洋さんが語る、カレッジに感じた可能性と地域のこれから【JAPAN CHALLENGER COLLEGE 2023レポート前編】

地方起業こそが、最強のビジネスモデル!藤野英人さん、柳澤大輔さん、中川直洋さんが語る、カレッジに感じた可能性と地域のこれから【JAPAN CHALLENGER COLLEGE 2023レポート前編】

2023年9月から2024年1月にかけて、公益社団法人ジャパンチャレンジャープロジェクトの主催で、地方で起業や新規事業に挑む若手人材を対象にした育成プログラム「JAPAN CHALLENGER COLLEGE(ジャパン・チャレンジャー・カレッジ)」が全国10府県で開催されました。

No.2
2023年開催概要

開催地域は、長野県、静岡県、和歌山県、愛知県、京都府、熊本県、三重県、高知県、滋賀県、兵庫県です。

このプロジェクトは各地域でITを活用してイノベーションを起こす人材を発掘・育成し、新たな価値創造を実現することで、日本全体のとしてのイノベーションエコシステムを形成することを目指す「経済産業省令和4年度未踏的な地方の若手人材発掘育成支援事業費補助金 AKATSUKIプロジェクト」の採択事業として開催されたものです。

対象の府県内で事業を展開中または展開予定のチャレンジャーを募集し、書類選考で57組を選出。チャレンジャーは約3カ月の間に、ITや地方創生の専門家による「チャレンジャー限定オンラインセミナー」、ITに長けた専門家との「個別ブラッシュアップ」、ビジネスの専門家による「個別プレゼン指導」を受けて事業アイデアのブラッシュアップを行い、最終発表会に臨みました。

最終発表会では、各地域の方や地元の協力者を観客に、公開でプレゼンを行いました。全国で活躍する起業家や投資家、地元経営者などがアドバイザーとなり今後の展開に向けたアドバイスも送りました。

地方起業こそ最強のビジネスモデル

今年度、初めての実施となった「JAPAN CHALLENGER COLLEGE」について、主催者であるジャパンチャレンジャープロジェクトの役員で、最終発表会のアドバイザーも務めた藤野英人さん、柳澤大輔さん、中川直洋さんにお話を聞きました。

藤野 英人

藤野英人さん
公益社団法人ジャパンチャレンジャープロジェクト 会長理事
レオス・キャピタルワークス株式会社 代表取締役会長兼社長 CEO&CIO
1966年富山県生まれ。1990年早稲田大学法学部卒業。国内・外資大手投資運用会社でファンドマネージャーを歴任後、2003年に独立しレオス・キャピタルワークス株式会社を創業。投資教育にも注力しており、東京理科大学上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、叡啓大学客員教授も務める。『投資家みたいに生きろ』(ダイヤモンド社)など著書多数。

IMG_1584

柳澤大輔さん
公益社団法人ジャパンチャレンジャープロジェクト副会長理事
面白法人カヤック代表取締役CEO
1998年、面白法人カヤック設立。鎌倉に本社を置き、ゲームアプリ、各種キャンペーンアプリやWebサイトなどのコンテンツを数多く発信。さまざまなWeb広告賞で審査員をつとめる。ユニークな人事制度やワークスタイルなど新しい会社のスタイルに挑戦中。2018年11月、地域から新たな資本主義を考える「鎌倉資本主義」(プレジデント社)を上梓。

IMG_1583

中川直洋さん
公益社団法人ジャパンチャレンジャープロジェクト代表理事
2002年よりワタミに入社、ワタミ創業者渡邉美樹の執行役員社長室長として10年間秘書を務める。ワタミグループの社会事業を中心に、みんなの夢AWARDの総合プロデューサーとして全般責任者に関わる。2019年独立し、全国の地域起業家や社会起業家を多数、発掘サポートしている。

3人がこのプロジェクトを立ち上げた背景には、「地域で儲ける」ビジネスモデルの可能性に注目していることが挙げられます。中川さんは著書でも「地方での起業こそが、最強のビジネスモデルである」と掲げていますが、この“最強”の意味について、藤野さんは「地方の有利さをうまく使ったら、実は東京より強いビジネスができる可能性がある。何より大事なのはチャレンジすることだが、地域にはチャレンジしやすい環境があり、失敗しても地域に必要なことを学んで再チャレンジすることができる」と言います。そのため、今回のプロジェクトでも地域でのチャレンジを促すことが一つの目的になっています。

柳澤さんは「人は経済的な価値だけでは幸せになれない。地域に行くと、それ以外の価値が転がっていて、生活スタイルや心の豊かさも含めた幸福を追求する場として最強になる可能性があると感じる。それに、地域では人のつながりが非常に近いので、事業の成功という意味でも、都会よりもショートカットできる可能性がある」と話します。今回のプロジェクトでも、うまく行けば一足飛びに全国あるいは世界へとステップアップするチャレンジが生まれてくるかもしれないのです。

果たして今回全国10か所で行われたプロジェクトは「地域で儲ける」可能性を切り開くことができたのでしょうか。ここからは、ジャパンチャレンジャープロジェクトの理事を務める藤野英人さん、柳澤大輔さん、中川直洋さん3人による対談をお届けします。

みんなの背中を押す

中川さん「今回はスタートラインに立ってもらうことを重視したので、プランができ上がっている参加者もいればまったくでき上がっていない参加者もいる形になりました。やる気があるなら、どのレベルだろうがまずは出てもらうことを大事にしました。そのあたりはどう感じましたか。」

藤野さん「非常にまちまちだとは感じました。すでに挑戦している人は解像度の高い夢を持っているけれど、思いつきだけで来た人は解像度が低い。ただ、解像度の低い夢に価値がないということは全然ありません。今回の経験でチャレンジしたいという思いに火がついて、行動変容が起これば、解像度は上がっていくと感じています。そして、自分には熱量が足りなかったと感じた人たちを、より実践的な方に動かしていく大きなきっかけになったのではないかとも思います。」

No.9_長野県
発表の様子(長野会場にて)

柳澤さん「ゆるい段階の計画でもOKにしたので、さまざまなものが混ざっていて、発表はしたけど実現に向かっていないものもある印象でした。でも、それでいいと思っているんです。発表することで自分がやりたいことが明確になったり、勇気づけられたり、最初の1歩になるんです。全員にオリジナルの賞を与えて背中を押すことを意識しました。」

藤野さん「プレゼンの中身を見ると確かに動機が薄かったり思いつきで始めたような人もいましたが、プログラムを経て、やりたいことのイメージがついてきた人が多かったんじゃないかなと思いますね。その意味でも、チャレンジャーにとっては人生が変化する一つの起点になったのではないかと思います。起業を通じて未来を考えたり、自分自身を見つめ直したり、また、ビジネス機会を捉えることで世の中に対する解像度をあげたりできたのではないでしょうか。」

中川さん「まちまちという意味では、一部の地域では高校生も参加してくれました。僕はもっと高校生を巻き込んでいきたいと思っていますが、そのあたりはどうでしょうか。」

柳澤さん「どんどん参加してほしいですね。高校生の場合は特に、発表している途中でもみるみる意識が変わったり、プレゼンが良くなったりしていくので、本当に面白いなと思います。ただ、やっているうちにやりたいことが変わって辞退することもあったりする。でもそれはそれでいいと思うんですよ。その過程で、これはやっぱり自分が本当にやりたいことじゃないとわかるのも大事なことなので。」

No.15_兵庫県報告書P22写真-1
参加した高校生に賞を授与する柳澤さん(兵庫会場にて)

中川さん 「大事なのは、将来の選択肢に起業を入れるということですよね。大企業ばかりではなく、ローカルベンチャーという選択があることを伝えたい。地元の子たちが思っている以上に、地方にはポテンシャルがめちゃくちゃあるぜっていうのを、僕らを通じて伝えたいし、ワクワクする高校生をどんどんつくってあげたいですね。」

「未踏の地」で取り組む意味

中川さん 「今回は全国10か所で開催しましたが、特徴のひとつは県庁所在地などの大きな都市ではない「未踏の地」を多く選んだことです。そうした地域に面白い人がいれば全国につなげていこうという考えでした。」

藤野さん「実は、日本で成功する9割以上は地方です。会社をつくるのはどこでもできるし、地方ならではの有利さというのもあります。今回の開催地はどこも創業支援に力を入れていますが、既存産業が弱くなってきたとか、高齢化が進んでいるという背景もあるので、若い人にチャレンジをしてもらいたいと思っているはずです。そこで創業を促すようなプロジェクトができたことはよかったと思います。」

柳澤さん 「僕はアドバイザーとして4つの地域に行きました。いわゆる田舎だけど、移住者に人気もあって、新しいことに取り組むのに積極的な地域だと思いました。積極的に地域おこし協力隊を採用したり、移住者が増えたり、新しい取り組みをしているところには、面白い人がいるという印象で、その面白い人が表に出ることで、まちをより活性化する相乗効果が生まれるだろうと思って見ていました。地域の良さを活かした企画が多いから、我々が見ても面白いし、本人もここでやる意味を考えることで、自分たちの地域の良さを生かそうとしてくれていて。それはいい仕組みだなと感じましたし、楽しめました。」

藤野さん「地域性はものすごく感じましたね。私は名古屋でアドバイザーをしました。名古屋は元々、やや保守的で、かつ製造業が強いという特色があって、意外とベンチャー企業は少ないんです。それで、ここ5年くらい、民間を含めて県をあげてベンチャー企業をつくる施策をやってきました。それがさまざまな形で実を結んでいるように思いました。なので、その地域におけるこれまでの努力や、ものの考え方、風土は、今回の提案にも関係していると思いましたね。」

中川さん「開催地域によって、盛り上がったところもあるし、ちょっと苦労したところもありましたね。豊岡市や飯田市はいわゆるスーパー公務員もいて、発表場所も面白かった。地域おこし協力隊をこれから募集する状態の地域では、僕らのやり方次第でもっとうまくいったかもしれないと感じて勉強になりました。」

柳澤さん「僕も豊岡市は特に印象的でした。発表会場が演芸場で、その場所がすごく良くて、発表する方もテンション上がるでしょうし、場の力もあって面白かったですね。」

No.16_兵庫県報告書P5写真
豊岡の会場では落語も披露された(兵庫会場にて)

藤野さん「イベントの認知不足や、集客のためのプロモーション不足もあって、このイベントそのものが、たくさんの地域の人に足を運んでもらうものになるという点ではまだまだこれからだと感じました。このイベントそのものを地域全体で盛り上げることが重要かなと。自治体との連携もありますし、企画している方たちの営業能力というのもあるかもしれませんが、回を重ねることも大事でしょうね。」

No.20_高知県報告書P21写真
観客からチャレンジャーに対し応援のメッセージを書いて掲出いただいた。メッセージがキッカケとなり観覧者だけではなく、チャレンジャー同士の交流も生まれていた(高知会場にて)

続けることで伸びていく

中川さん「来年度以降も、また開催する方向です。今回は開催1回目だったので、印象づけをしたいという点もありましたが、運営のノウハウもできてきたので、もっと深く丁寧にしていきたいと思っています。お二人は今後はどのように展開していきたいですか。」

藤野さん「このプロジェクトがレベルアップしていくためには、手を挙げる人が増えなければいけないので、まずはこのイベントに参加すれば、成長もできるし、人生も変わることを伝えたいですね。私は日経ソーシャルビジネスコンテストの審査員を初回から7年やっていますが、初回は参加者がすごく少なかったのですが、7回続けると飛躍的にレベルも上がっていきました。ベンチャーに対する意識も変化しているし、国もスタートアップを生み育てることに力を入れていくと言っていますので、このJAPAN CHALLENGER COLLEGEも世の中全体の意識の高まりとともに、レベルアップしていくのではないでしょうか。」

柳澤さん「続けた方がいいですよね。どんどんプロジェクトが出て、失敗もして、形になるものが少なかったとしても、続けていける地域は結果的に面白くなっていきますから。」

No.21_高知県報告書P2写真
チャレンジャー同士で交流を深める場も(高知会場にて)

中川さん「そうですね。あとは今年参加してくれた人が、そのままプロジェクトマネージャーになってもらうとかね。」

柳澤さん「僕らが開催地をまわりながら、起業家を育てるのも面白いんじゃないかと思いました。また今回は、他の地域との交流がほとんどなかったので、チャレンジャーが他の地域のプレゼンを聞きに行くツアーができれば、面白いかなと。」

中川さん「たしかに地域間の交流があるとさらにレベルアップしていくでしょうね。その中から、ステップアップして全国大会に出場する人が出てくれば、また広がっていくはずですし。今回も全国大会的なものとして3月11日に「いざ鎌倉!地⽅創⽣の祭典〜JAPAN CHALLENGER AWARD2024〜」を開催するんですが、チャレンジャー7組のうち3組が、JAPAN CHALLENGER COLLEGEのチャレンジャーです。」

柳澤さん「そうやって結果が出れば、今年開催した地域が先導して続けつつ、地域間の交流もして、あらたな地域にも展開して、どんどん広めていくことができるのではないでしょうか。そうしていきたいですね。」

◯取材日:2024年2月20日

(対談ここまで)

「いざ鎌倉︕地⽅創⽣の祭典〜JAPAN CHALLENGER AWARD2024〜」観覧者募集中

対談の最後にも述べられていた全国版の面白エンターテイメントビジネスコンテスト「いざ鎌倉︕地⽅創⽣の祭典〜JAPAN CHALLENGER AWARD2024〜」は、現在観覧者募集中です!

審査員やチャレンジャーとの交流ができるランチレセプションもあります!
是非ご参加ください!

鎌倉バナー

〇開催概要

★いざ鎌倉︕地⽅創⽣の祭典〜JAPAN CHALLENGER AWARD2024〜

【日程】2024年3月11日(月)
【時間】13時~15時半
【場所】建長寺(神奈川県鎌倉市山ノ内8)
【参加費】2,000円(別途拝観料500円必要)

★ランチレセプション

同日に審査員やチャレンジャーも参加するランチレセプションを開催します。アワード観戦前に、是非ご参加ください!

【時間】11時半~12時半
【場所】点心庵(神奈川県鎌倉市山ノ内7)
【参加費】4,000円(アワード観戦含む、別途拝観料500円必要)