最近は、地方での暮らしが注目を集め、移住という選択肢を考える人が増えてきました。地域おこし協力隊への関心も高まり、令和6年度は、7,910名の隊員が1,176の自治体で活躍しています。けれども、人手不足が叫ばれる昨今、隊員を採用するのは決して容易なことではないでしょう。自治体にとっても隊員にとってもwin-winになる採用は、どのように進めればいいのでしょうか。地域おこし協力隊の採用を代行する株式会社LIFULLの地方創生統括部 空き家対策事業グループに所属し、総務省地域力創造アドバイザーでもある後藤大夢(ごとうひろむ)さんに聞きました。
(Sponsored by LIFULL)
ミスマッチの原因は、募集前に生まれていた?
地域おこし協力隊の採用には、募集要項の設計から募集、選考を経て採用と、隊員が着任するまで、いくつもの段階があります。そしてそのときどきによって、応募はくるのか、どんな人たちが応募してくるのか、隊員が地域に馴染んで活動していけるのかなど、いくつものハードルが生じます。
もし、いずれの段階でも上手くいかないことがあるのなら、「それはミスマッチの予兆があるということです」と、後藤さんは言います。選考の結果としてミスマッチがあるのではなく、募集の時点でミスマッチが生じていることもあるのです。
後藤さん「募集する段階で、どんな方に来てほしくて、その人が3年の任期後にどのような状態になっていて欲しいか、自治体はそこを具体的にイメージしておいた方が良いと考えています。そのうえで選考時には、応募者がどんなライフスタイルや働き方を求め、今後どういうキャリアビジョンを持っているかを確認していきます。そこで採用側と応募側の両者がマッチしていることが望ましいですね。その段階でミスマッチしていると、着任した後もミスマッチは続きます」
それぞれの段階でミスマッチを生じさせないようにするために、採用活動を進めていくにあたってLIFULLがまず掲げているのが、4つの要素です。優先順位が高い順に、ビジョンフィット、カルチャーフィット、ポテンシャル、スキルフィット、この4つです。
後藤さん「もっとも重要なのがビジョンフィットです。一緒に働き、同じ地域で暮らしていくにあたってのビジョンがフィットしていることですね。次に、地域の方々や職場の雰囲気に合うかどうかというカルチャーフィット。スキルフィットは、与えられる業務に能力が適しているかですが、それよりも学ぶ意欲や積極的に行動して変化していけるかといった伸びしろを重視するため、ポテンシャルが3番目となり、最後がスキルフィットです」
後藤さんが各自治体の採用代行に携わる際には、その自治体のビジョンやカルチャーを改めて振り返り、隊員にどんなポテンシャルやスキルを求めるのか、4つの要素を整理することから採用活動をスタートさせています。それが、実際に募集するところからミスマッチを避けることにつながるのです。同時に、これまでの採用活動に問題がなかったか洗い出すことも大切です。これまでの採用にミスマッチが生じていると感じるのであれば、どこかに何らかの原因があるはずです。
後藤さん「協力隊の募集をどこかに委託する際には、自分たちの採用活動のどこに問題があるのかを認識したほうがいいと思っています。たとえば、応募はたくさん来るのだけれど、採用するとミスマッチだったケースが多いのであれば、募集要項の作り方や選考の過程に問題があるのかもしれません。応募が少ない、もしくは来ないといった場合では、募集要項の設計や募集のかけ方に問題があるのかもしれません」
採用活動に関するこれらの問題や注意点は、就職のための採用でも同じことが言えます。けれども、地域おこし協力隊の採用に関しては、就職と決定的に異なる点があります。それは、働くだけではなく、暮らすという要素が含まれること。「仕事という視点だけではなく、移住の視点もあるので、活動内容だけでなく、ライフスタイルがその地域に合うかという二本の軸で擦り合わせていきます」と、後藤さんは説明します。
募集の準備段階からおためし地域おこし協力隊の実施まで、幅広くきめ細やかなサービス
それでは、実際に地域おこし協力隊の採用代行を依頼すると、どんなサービスが提供されるのでしょうか。採用代行でまず手をつけるべきは、募集の際に必要となる募集要項の設計ですが、その前に地域おこし協力隊のミッションが明確になっていない場合が多いと後藤さんは指摘します。
後藤さん「“ミッションは地域の農産品のPRです”といった、ざっくりとした内容のことが多いんですね。その場合は、どういうターゲットに、どういう方法でPRをしようと思っていますか? とか、そもそもどんな農産品を打ち出したいんですか? とか、そういった話から始めていきます。3年の任期を終えたとき、隊員さんのなりわいや地域でのポジションをどう確立しているか、その結果として地域課題が解決できる状態になっているか、そこまで考えましょうっていう話をさせていただいて、ミッションを固めていきます」
ミッションを設計するうえで大切なのは、その自治体の地域課題を具体化すること。人口減少によって担い手が不足して、というのは全国各地、どこでも耳にする課題です。けれども、後藤さんいわく、「それは社会課題であって、地域課題ではないんです」。
課題をより具体的に考えていけば、なぜ農業の担い手が不足しているのか?といった問いから、例えば、農業では儲からないから、という答えが生まれます。では、なぜ儲からないのか?と問えば、農産品のブランド化ができていない、といった具合に、自分たちが取り組むべき課題に落とし込むことができます。そこまで地域課題が見えてくれば、地域おこし協力隊に求めるミッションもおのずからより具体的に考えることができます。
実際に募集要項を設計する際は、LIFULLのこれまでの経験に基づいて用意した項目に対し、ミッションを踏まえたうえで活動内容や勤務条件などを考えていくことで、過不足のない要項を設計できます。まずは、募集要項に必要な情報を記載すること。それができれば、ミスマッチする人が応募してくることが減らせ、採用活動の効率も良くなります。
採用活動は、時間も手間もかかるもの。たくさんの応募があるに越したことはありませんが、むやみに応募が増えれば、それだけ採用にかかる工数は増え、担当者の負担が増えてしまいます。そのため、誰でもよいと広く募集するのではなく、ターゲットを意識しなければなりません。
後藤さん「ただ3年間の仕事として地域おこし協力隊を考えている人よりも、ミッションや業務内容、解決したい地域課題に関心がある人に応募していただきたいと思っています。ですから、地域おこし協力隊に関心があるだけでなく、その先の定住や起業を見据えている人をターゲットにしています。応募数の多さではなく、ミスマッチしない応募が来るかを重視しているんです」
さらに、応募者の選考に入る前にカジュアル面談を実施します。応募者とやりとりするところから、実際にカジュアル面談を行うのも、LIFULLの採用代行には含まれています。カジュアル面談で聞き取った内容はヒアリングシートに記載され、その後の選考に活かしていきます。
後藤さん「カジュアル面談では、応募資格を満たしているかといった点を確認するほか、募集要項の内容を一つ一つ丁寧に説明します。地域の課題や、それが課題となっている理由、募集の背景など、募集要項のテキストでは書ききれないプラスアルファのところをお伝えしておくんです」
事前に詳しい地元の情報を伝えておけば、選考を進めてからミスマッチが生じることを防げます。このように、採用のさまざまな段階でミスマッチを防ぐ工夫がきめ細やかに組み込まれていることがわかります。それが、お互いにとってwin-winの採用につながり、同時に採用活動の効率化が図れるのです。
採用活動の中でも、後藤さんがぜひ実施したほうがいいとオススメしているのは、おためし地域おこし協力隊。宿泊施設の確保は必要になりますが、企画や運営はLIFULLに任せることも可能なので、応募者が現地に足を運び、地域での暮らしを体験する機会をぜひ設けたいところです。
後藤さん「例えば、最終面接の前に一度現地に来て、地域のさまざまな方に直接会えるというのは、応募側にも地域側にもミスマッチを予防する貴重な機会になると思っています。そうすることで、ここで暮らしていけるのか、という覚悟を確認できるんです。現地に到着したときは、美しい風景を目にして、“ここに住みたいです”と言っていた応募者が、翌日の夜には“ちょっと自信がなくなってきました…”と口にされることもあるんです。やはり実際に体験してみることが、とても大事だと思います」
地域おこし協力隊には、ひとりの人間の人生が深く関わっている
ここまでにご紹介した内容を含め、LIFULLでは採用にまつわる一通りの業務に実績を重ねてきています。それは、着任後の活動計画を含む募集要項の設計から、募集媒体への掲載・スカウトの実施、カジュアル面談の代行・応募者の対応、選考方法に関する助言、募集イベントやおためし地域おこし協力隊の企画・運営まで、多岐に渡ります。
自治体の担当者だけで採用を進めることが難しい場合は、採用代行を利用するという選択を検討するのもよいでしょう。その際は、自分たちが課題として感じている点をフォローしてくれる業者かどうか、事前に確認することが大切です。また、採用代行には、『スマウト』のようなサービスを介してユーザーにスカウトを送り、その人を自治体に斡旋するといった要素も含まれるので、職業紹介事業の許可を得ている業者が安心です。
最後に、地域おこし協力隊の採用に携わるにあたって後藤さんが意識していること、自治体の人にも心に留めておいてほしいことを尋ねました。
後藤さん「まず、協力隊として来る方の人生について、ちゃんと考えましょう、と思っています。“協力隊”という、ぼんやりとした固まりではなく、協力隊の●●さんという具体的なイメージがないと、いざ来たときも仲間として受け入れられないと思うんですね。もう一点は、地域おこし協力隊はその地域のキーマンになる人だと捉えてほしいということですね。地域の幹部候補を選ぶという意識で、募集要項の作り込みや選考での見極めに取り組むよう、意識を変えていただきたいと考えています」
地域おこし協力隊の採用は、決して簡単な業務ではないかもしれません。けれども、地域おこし協力隊として魅力的な人物を地元に呼び込むことができれば、地域の活性化や発展につながるだけに、非常に意義のある業務でもあります。そして、人の人生に関わるという深い意味も持っています。採用代行など、プロの力を上手に利用することで、効率的に、やりがいを感じながら採用活動に取り組むことができそうです。