インタビュー

Q.移住する前は大阪で動画制作の仕事のお仕事をされていたとか。

そうなんです。でもちょうどコロナ禍で徐々に仕事がオンラインで完結するようになって。人と直接関わる機会もなくなってなんかつまらないなと。

実はそれで大阪の中で20ヶ所くらい転々と引っ越しを繰り返していたんです。

Q.20ヶ所!?かなりユニークなライフスタイルですね。

コロナによって変容した対人関係や社会に対していろいろ葛藤を抱いていた時期で。

住まい方を変えることで見えてくるものがあるかもしれないと、ホテルやマンスリーマンションで暮らしはじめました。

2年くらい引っ越しを繰り返しながら「面白い生き方はないかな」と模索していたんです。

旅を通じてこれからの自分のあり方を模索していたころの松田さん

Q.そこから地域おこし協力隊に応募、というのはどんな流れで?

徐々にコロナも落ち着いた頃、自分のこれからを少し見据えてみようと、大阪から車で行ける範囲で旅に出かけるようになりました。

で、土地ごとのコミュニティに触れていったときに、直接相手の顔が見える関係性の中に身を置くのが楽しいなということに気づいたんです。

加えて旅を重ねる中で地域に存在する様々な社会課題の現状も知り、何か力になりたいと強く感じるようになりました。

そんなときに、地域の課題をビジネスで解決する釜石市の「右腕型地域おこし協力隊」という制度に出会いました。

Q.釜石市の協力隊に応募しようと思った理由を教えてください。

釜石に決めたのは、知り合いがいない環境でゼロから挑戦した方が、自分の成長に繋がるかなと。

Q.今取り組まれている「右腕型協力隊」のミッションはどのようなものなのでしょうか。

東日本大震災からの支援活動経験を活かし設立された「一般社団法人ゴジョる」で、環境×観光の新たなビジネスモデルを創出することをミッションに活動しています。

例えば、薪を製造する過程で生まれる廃棄木材を炭に変えたり、その炭を製造する過程で生まれる熱を利用してイチゴを栽培したり。

将来的にはそれらを観光農園化していくことを目指しています。

Q.実際の働き方についても教えていただけますか?

驚いたのは働き方の自由度で、協力隊としての業務は月96時間ほど。

残りの時間はすべて、自分のビジネスの準備に充てられるんです。この柔軟な働き方があるからこそ、地域活動と個人事業の両立ができています。

廃棄木材を炭に変えるなど、一次産業の課題解決にも積極的に取り組んでいるのだそう。

Q.動画制作のお仕事とのギャップに戸惑うことはありませんでしたか?

むしろ「やりがい」しかありません。都会だと自分は1000万人の中の1人ですが、ここでは「唯一無二」のインパクトがあります。

若者が来ただけで市役所の人や住民の方から「待ってたよ!」と期待される。

何もないからこそ、自分が動けばすぐに形になり、評価されるスピード感がめちゃくちゃ速いんです。

Q.個人事業では三陸の食材を大阪に卸していると伺いました。

三陸のワカメや魚って、信じられないくらい美味しいのに、流通の壁や食文化の違いで捨てられてしまうものがあるんです。

「もったいない、なら僕が繋ごう」と。

大阪の知人の飲食店を借りてイベントをしたり、直接食材を卸したりしています。

Q.なぜ、ご自身で食材の卸まで担おうと思ったのでしょうか?

都市と地域の“分断”を埋める接点になれるのは、移住した僕だからできることかなと思ったんですよね。

Q.地域の可能性を、松田さん自身が一番楽しんでいるように見えます。

毎日が「問い」だらけですが、答えがないから面白い。

泥臭いことの連続ですが、自分の足で立ち、自分の人生を生きている実感が24時間ずっとありますね。

Q.最後に移住を検討している方へメッセージをお願いします!

ネットだと自然豊かな場所で穏やかに暮らしているとか、若者が地域で頑張っているとか、キラキラした情報がたくさん流れてくると思うんですよね。

でもそういうのだけをイメージして実際に地域に行くと、そうじゃない部分の方がたくさんあって。

いいところも悪いところも結局その場所に行かないとわからない。

だから限りある時間の中でどうやって情報をすくい取っていくかがすごく大事じゃないかなと思います。

ありがとうございました!

編集メモ

松田さんの話を聞いていて最も印象的だったのは、地域にある「余白」の捉え方です。

都会には誰かが用意した「答え」や「便利なサービス」が溢れている一方、地域には問い(課題)はあっても答えはない。

松田さんは、そんな「都会から見ればネガティブな欠落」を、自分にしか埋められない「チャンス」と捉え、新たな形へと変換しはじめています。

ネットに流れる「地域での豊かな暮らし」というキラキラした断片のイメージで移住すると、現実とのギャップにショックを受けることも少なくありません。

でも「答えがない」「誰もやっていない」という余白こそが、若者が地域で「唯一無二の存在」として活躍できる最大の武器になり得るのだとも思います。

「自分の人生を24時間自分で生きている」という実感は、泥臭い挑戦の先にあるものなのかもしれません。

 

関西へのイベント出店を通じて地域の魅力を届けるなど、地域外へも活動を広げている