SMOUTをきっかけに長野県大町市に移住者が! LODECたつみかずきさんの丁寧な移住者フォローの極意

10月、以前に取材した長野県大町市、LODEC Japan合同会社のたつみかずきさんから「SMOUTでの募集記事をきっかけに、女の子が移住してきました!」と連絡をいただきました。たつみさんが募集記事を投稿してから、わずか数ヶ月でのスピード決定。いったいどんな人なんだろう?たつみさんはどんなふうにスカウトしたの?その極意を伺うべく、再び大町市へと向かいました。

移住してすぐにアルバイトも紹介!

待ち合わせたのは、大町市の中心地、信濃大町駅前。たつみさんと、10月初旬に移住してきたという、ナンヤちゃんこと南谷有美さんが待っていてくれました。たつみさん自身も移住者で、ゲストハウスやシェアハウスの運営を手がけている方ですが、移住者には移住後のフォローなども丁寧に行ない、地域に馴染みやすい配慮をしています。

たとえばナンヤちゃんは、LODECが運営するシェアハウスに住みながら、峯村農園というりんご農家さんで収穫のアルバイトをしているそう。じつはこのアルバイトも、たつみさんの紹介です。

たつみさん「ナンヤちゃんは、収入には切羽詰まってなさそうだったから、期間限定になるけどちゃんと地域が見える仕事がいいなと思って、峯村さんを紹介しました」。

「そんなところまで考えて紹介してくれてたんだ!」と驚くナンヤちゃん。移住してすぐに面接に行き、翌日には働き始めたそうですから、移住したら終わりではなく、仕事まで紹介するたつみさんのきめ細やかなフォローには頭が下がります。

たつみさん「ナンヤちゃんから移住するって連絡がきたときはびっくりしましたよ。本当に突然きたんです。すごく軽い感じで「行きます」って。そんなふうに移住するタイプには見えなかったから」。

なぜなら、ナンヤちゃんはさまざまな経歴をもち、現在はあちこちを旅して回っているという「旅人」だったから。その経歴がまたすごいのです。

保育士、カメラマン、保育園設立、そして旅人に!

ナンヤちゃんこと南谷有美さん

ナンヤちゃんは、短大卒業後、愛知県名古屋市で保育士として働いていました。その後、趣味で写真を撮り始めて個展を開催すると、それを見に来た写真スタジオの人に「うちで働かないか」とスカウトされます。するとナンヤちゃんはすっぱり保育士をやめ、その写真スタジオで1年間、アシスタントとして働きました。そして独立。フリーのカメラマンになります。

ナンヤちゃん「26歳で独立したんですけど、しばらくして、また保育園の仕事がしたいなと思うようになりました。でも、カメラマンの仕事も続けたかったからどうしようかなと思って。それで、じゃあ、自分で保育園をつくっちゃおうって思ったんです」。

経営者になれば、シフトに入らずに済み、保育園の仕事もやることができる。そう考えたナンヤちゃんは、何もわからないまま市役所に行き「保育園をつくりたいんですけどどうしたらいいですか?」と聞くところから始めていったそう。そして名古屋市の中心市街地のビルの一角に、小さな認可外保育園を設立しました。

市街地ということもあり、経営は順調。しかし、スタッフが仕事ができるようになっていくと、シフトには入らないナンヤちゃんがやるべき仕事は、どんどんなくなっていきました。

ナンヤちゃん「これはもう私の出る幕はないな、と。それに、保育園をつくったことで満足してしまったところがあって。それで8ヶ月後には、人に譲って辞めてしまいました」。

それが2018年4月のこと。ずっとビルの一角で働いていたせいか、息苦しさを覚えていたナンヤちゃんは、その後しばらく旅に出ようと決めました。カメラマンとしての仕事も整理して、まずは暖かく、自然豊かな宮古島へ1ヶ月。その後、友人の知り合いが「ベビーシッターを探している」という情報を聞き、福井県の農家で住み込みのベビーシッターをやることになりました。

ナンヤちゃん「赤ちゃんの世話をして、ときどき畑も手伝って。それで、田舎の生活って楽しいなと思うようになりました。ここでの経験は大きかったですね。「人がどんどんいなくなってねぇ」っていう話をおばあちゃんから聞いたりもして、まちづくりに興味を持ったんです」。

福井には約1ヶ月間滞在し、夏の間は涼しいところに行こうと、長野県軽井沢で、子ども向けの野外プログラムのネイチャーガイドの仕事につきます。ベビーシッターもネイチャーガイドも、保育士の資格を持っていたことが活きました。毎日毎日、虫取り網をもって、子どもたちと走り回っていたそうです。

ナンヤちゃん「その仕事は夏休みの間だけだったので、次はどこに行こうかなと考えていたときに、SMOUTでLODECの募集記事を見たんです。なんでSMOUTを見たのかはよく覚えてないんですけど、福井での経験があってまちづくりに興味をもっていたので、それで検索して引っかかったんじゃないのかな」。

ナンヤちゃんが撮影した旅の途中の写真

こちらも、ナンヤちゃんが撮影した旅の途中の写真

掲載プロジェクトの、きれいな写真とタイトルに惹かれる

たつみさんがスマウトに投稿した「ほっといても勝手にやってくれるやつ募集」記事

SMOUTを見ていて、最初にナンヤちゃんの目に入ったのは、たつみさんが撮影したきれいな写真でした。プロのカメラマンのナンヤちゃんは「めっちゃうまい写真がある!」と驚き、思わずクリックしたのだそう。

そして飛び込んできたタイトルが「ほっといても勝手にやってくれるやつ募集」という、よくわからないタイトル。しかしそのタイトルに、ナンヤちゃんは惹かれました。

ナンヤちゃんすっごい心に刺さったんですよ。私、放っておいてほしいから(笑)。それで、なにこれ、大町ってどこ?から始まったんです」。

それまで、大町市がどこにあるのかも知らなかったそうですが、調べてみると、なんだかよさそうなまちだ、と感じたのだそう。

ナンヤちゃんは8月いっぱいで軽井沢の仕事が終わったあと、いったん名古屋に戻って、どうしてもお願いしたい、と言われていた撮影の仕事をすることになっていました。すると、軽井沢から名古屋へ戻る列車の途中に、ちょうど大町市があることがわかりました。そこで「行ってみたいんですけど、●日は空いてますか?」とたつみさんに連絡を入れたのだそうです。

じつはたつみさんはその前に、SMOUTのメッセージ機能を使って、「ほっといても勝手にやってくれる人募集」という記事に「いいね」を押してくれた人全員に、興味を持ってくれたお礼と簡単な質問を書き、メッセージを送っていました。

たつみさん「だいたい3分の1ぐらいの人が返信してくれましたね。そのなかにナンヤちゃんもいたんです」。

LODEC Japan合同会社のたつみかずきさん

事前にたつみさんとコミュニケーションをとっていたことで、大町市への突撃訪問は、スムーズに実現しました。LODECが運営しているシェアハウスやゲストハウスを見せてもらい、やはり直感どおり「よさそうなまちだな」と改めて思ったのだそうです。

ナンヤちゃん「そのときはそれで終わったんですけど、名古屋の仕事が終わったらどこに行こうかなと考えていて「そうだ、大町市だ!」と思って。それでたつみさんに「私、やっぱり大町に行こうかなと思うんですけど」って連絡しました。そしたら「え!本当にくるの?」みたいな(笑)。「何やりたいの?」「うーん、まだ決めてないです」っていう感じで、本当に何も決めずにきちゃいました」。

今もまだ、なぜ迷うことなく大町市に移住を決めたのかよくわからない、というナンヤちゃん。漠然とした直感に、背中を後押しされました。

「ここは前にもきたことがあったかな?」と思うほど落ち着くまち、大町市

ナンヤちゃん「なにがそんなに良かったのって聞かれると、正直わからないんですけど、すごく落ち着くんですよ。愛知が地元なんですけど、愛知はなんかずっとしっくりきてなくて。実家にいるときは、いつも外に出なきゃと思って、仕事したり、友だちと遊びに行ったり、ほとんど家にいませんでした。でも大町には、なぜか「ただいま感」があるんです。第六感的な話で申し訳ないんですけど「あれ、ここは前にもきたことがあったかな?」って何回か思っちゃったぐらい(笑)」。

じつは寒さにかなり弱いというナンヤちゃんは、これからやってくる冬のことを考えると、大町での暮らしに不安もあるそうです。冬の間だけどこかに行こうかとも考えています。ただ、こんなに落ち着く土地はこれまでなく、簡単には捨てがたいところがあるのだそう。また、実際にきてみて、大町の人の優しさを実感しています。

ナンヤちゃん「よく知らない人にナンパされるんですよ(笑)。数日前も商店街を歩いていたらおじいちゃんに声をかけられて。「じつは10月から大町に住んでて」って言ったら「ちょっと寄っていきなよー」って家まで連れていかれて、もてなされたんです。なんかあったかい人が多いなぁって」。

ナンヤちゃんが撮影した大町市の写真

こちらも、ナンヤちゃんが撮影した大町市の写真

「私、スカウトされる人生なんです(笑)」とナンヤちゃん。先日も、隣町の写真屋さんまで写真の現像に行ったところ、そこの店長さんに「安曇野のギャラリーを紹介するから個展をやらないか」とスカウトされたのだそう。

現像した写真がすばらしかったことは想像にかたくありませんが、カメラマンになったのも、当初1週間の滞在予定だった宮古島で仕事が見つかり、結局1ヶ月間滞在したのも、ベビーシッターの仕事も、いろいろな人に声を掛けてもらったことから始まりました。誰もが思わず声を掛けてしまうというのも、ナンヤちゃんの魅力であり、才能なのかもしれません。

一方で、ただスカウトされるだけではなく、保育園を始めたり、名古屋での撮影の仕事を整理してまで旅に出たり、知り合いのいなかった大町市へ突然移住したりと、ずば抜けた行動力も持っているようです。

ナンヤちゃんにカフェ経営を勧める理由

たつみさん「まぁナンヤちゃんのことだから、そんなに長い間はいないかもしれないっすね(笑)」。

移住してきた人には、長く定住してもらいたいと誰もが思うところですが、たつみさんは至って冷静に、ナンヤちゃんの今後について、話してくれました。

たつみさん「でも個人的な理想としては、1年はみてほしいなと思います。地元のおばあちゃんたちが言ってたんだけど、おばあちゃんたちも、冬になったら「こんなところ出て行ってやる!」って毎年心の底から思うんだって。ただ、春になると「私たちはなんて天国みたいな場所にいるんだろう」ってなる。そういう、自然のツンデレ感に相当やられてて、それをもう、生まれてこのかた続けてますって言うんです(笑)。すごいですよね。だから1年はいて、それを体感してほしいなって思う」。

取材終了後、みんなでごはんを食べに行きました。そこで「で、ナンヤちゃんは何をやるの?」と、突然たつみさんが話し始めました。「ナンヤちゃん、カフェやりなよ。物件も、融資してくれる銀行も紹介するよ」とどんどん話が進んでいきます。

たつみさん「信濃大町の駅前にちょっとおしゃれなカフェをつくったら100%流行ると思う。だって、黒部ダムと白馬村っていうキラーコンテンツがあって、それにくる人たち300万人が、すべて信濃大町駅を通過していくんです。北陸新幹線もあって、糸魚川から松本・安曇野に抜ける人もいる。じつは大町ってすごいところにあるんだよね、誰もそれに気づいてないけど。っていうのをSMOUTにも書きました(笑)。だから駅前でカフェをやったら面白いと思うんだよね」。

「いや、私はカフェは向いてないと思います」とタジタジのナンヤちゃんに「そんなことないよ!ナンヤちゃん絶対向いてる。スタッフ雇ったら、旅にだって出られるじゃん。やっちゃいなよ!」とさらに詰め寄ります。「私、カフェの話なんて初耳ですから!今、初めて言われましたから!」と取材陣に訴えるナンヤちゃん(笑)。

「いつもそんなにグイグイ行くんですか?」と笑いながらたずねると「いやいや、ナンヤちゃんだからですよ」とたつみさん。

たつみさん「移住者だって、人によってキャラが違うじゃないですか。普段は、こういうビジネス的な話はあんまりしないです。たとえば、もともとビジネス志向がある人って、地域の人とけんかしちゃうんですよね。才能があっても地域に受け入れられなくて、その第一フェーズがクリアできなくて終わる人が多いんです。ナンヤちゃんはまず、地域の人と絶対ケンカしないなと思った。だから何をやってもいけるだろうなと」。

たつみさんは、本当によく、人を見ているなと思います。そして、とてもマメ。「いいね」を押してくれた人にメッセージを送り、丁寧にやりとりしていたことからもそれはわかります。東京でのイベントの案内などもお知らせしていて、SMOUT経由で5人ほど参加してくれたこともあるのだそう。

そして移住後は、その人に合ったこと、必要なことを見極めて、しっかりフォローしてくれる。「ほっといても勝手にやってくれる人」を募集しつつ、勝手にやれるよう、ちゃんと力になってくれる。移住者にとってこんなに優しく、ハードルが低いまちは珍しいのではないかと改めて感じました。

ナンヤちゃんの今後も楽しみなところですが、まだまだ「ほっといても勝手にやってくれる人」は募集中。興味のある方は、ぜひSMOUTから連絡してみてくださいね!

文 平川友紀

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ABOUTこの記事をかいた人

HirakawaYuki

ストーリーライター/文筆家 リアリティを残し、行間を拾う、ストーリーライター/文筆家。1979年生まれ。 20代前半を音楽インディーズ雑誌の編集長として過ごし、生き方や表現について多くのミュージシャンから影響を受けた。2006年、神奈川県の里山のまち、旧藤野町(相模原市緑区)に移住。その多様性のあるコミュニティにすっかり魅了され、現在はまちづくり、暮らしなどを主なテーマに執筆中。通称「まんぼう」。メンタル的自給自足、目指してます。