​​スマウト移住アワード2025上半期1位。加賀市の“体験設計”が生んだ移住の新潮流

スマウト移住アワード2025上半期1位。加賀市の“体験設計”が生んだ移住の新潮流
地域ページ 石川県 加賀市 
スマウト導入 2020年7月〜
ご担当者さま 政策企画部 企画課 主査 田中 悠貴 さん + 現地運営パートナー ぶなの森 山田さん

課題

  • 観光地としての認知は高い一方、「移住先」としての印象が弱かった
  • “住むイメージ”にまで到達する情報発信が不足
  • 関係人口形成の入口が限定的で、母集団が広がりにくかった

打ち手

  • スマウトを第二の移住チャネルに位置づけ、地域資源を体験化したフィールドワークを多数展開
  • 「海・畑・温泉」「空き店舗×図書館」「お試し住宅」など、テーマの幅を持たせた企画を設計
  • プロフィールを丁寧に読み込み、個別コミュニケーションを強化

成果

  • スマウト移住アワード2025上半期 市町村ランキングで初の1位を獲得
  • 図書館・工芸・お試し住宅など複数テーマで100件超の反響
  • 就農・加工品開発・協力隊着任など、多様な挑戦者が地域へ流入

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加賀温泉郷で知られる加賀市は、山・海・温泉がコンパクトに揃う、生活と観光が境目なくつながるまち。地元の工芸や食文化、温泉が日常に溶け込む環境は、移住者にとっても魅力的な資源になっています。
移住施策は政策企画部 企画課が担い、現地パートナーである「ぶなの森」山田さんがフィールドワークの運営や応募者対応を担当。行政と民間が連携し、温度感の高い“まちとの出会い方”を設計しています。

導入前の課題と、スマウトで実現したかったこと
観光地から“暮らしのまち”へ。移住の入口づくりへの転換

観光都市としての知名度は十分ある一方で、移住の文脈では「どんな暮らしが待っているのか」が伝わりきっていないというのが、まちの大きな課題。農業・観光業の担い手不足も深刻化し、従来型の募集だけでは顕在層に情報が届きづらい状況でした。

また、農業・観光・創業など、多様な分野で担い手を求めていたものの、地域の日常に触れられる機会が少なく、「知る → 体験する → 関わる」までの導線が弱い状態でした。

そこで注目したのが“体験から入る移住施策”。
スマウトで企画を複数展開することで、

  • 加賀市を初めて知る人
  • 工芸や観光に興味がある人
  • 温泉街の暮らしを体験したい人

など、興味関心の異なる潜在層へ届けられると考えました。

加えて、せっかく運用するならと「スマウト移住アワードで上位に入る」というKPIを設定。プロジェクトの本数・反応・改善を戦略的にマネジメントし、年間を通じて継続的に発信していきました。

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地域の魅力と弱み
日常に温泉がある豊かさと、担い手不足という構造課題

加賀市の魅力は、里山・里海・温泉がそろう環境と、工芸や食文化が日常にある暮らしの豊かさです。毎年多くの観光客が足を運び、加賀市の素朴でのどかな空気に癒やされ、せわしい心と日常をリセットしてそれぞれの街へと帰っていきます。
一方で、観光の印象が強いぶん「移住先」としての認知が弱いのも大きな課題。近年、農業や観光の担い手不足が続いているといいます。

運用方法と工夫
日次リサーチと現地連携で磨く“体験企画の質”

運用は、企画課の田中さんが全体戦略を担い、「ぶなの森」の山田さんが現地対応・記事作成・応募者との対話を進める二人体制。行政と民間が密に連携しながら進めるスタイルが特徴です。

常に複数テーマの企画が並ぶように設計し、

  • 海で遊ぶ×畑で育てる×温泉文化
  • 空き店舗を生かした図書館での店番体験
  • 温泉街を“住むように過ごす”お試し住宅

など、多様な興味軸に応じた入り口を整えています。

さらに特徴的なのが、スマウト上の他自治体の企画を日次で研究する運用スタイル。
タイトル・構成・写真・導線を細かく分析し、反応のよい形式を取り入れて改善することで、体験企画の質を継続的に高めています。

応募者との対話では、プロフィールの読み込みを重視。興味領域や体験の目的をつかみ、適切な企画へ案内することで、体験と移住意欲の距離を縮めています。

成果と、出会えた人たち
30企画で1,493件の関心。体験から移住へ広がるつながり

2025年上半期だけで30本のプロジェクトを掲載し、「興味ある」合計1,493件を記録。特に以下の企画は100件を超える反響を獲得しました。

  • 温泉地の空き店舗を活用した「図書館」でお店番&観光アイデアを考えるフィールドワーク。
  • 温泉街に誕生した「お出汁屋さん&カフェ」で、旨味を極めた新メニューの開発体験。
  • 【お試し住宅】朝風呂から夜のまち歩きまで。温泉街で“住むように過ごす”移住体験

これらの積み重ねが評価され、加賀市はスマウト移住アワード2025上半期 市町村ランキングで初の1位を受賞。前回3位からの大躍進でした。

さらに、スマウト経由で移住も増加。令和6年度は7名、令和7年度も続々と決まっている状況だといいます。

特に課題だった、加賀市の特産品・梨の継承者誘致においても、スマウト経由で担い手不足が徐々に改善。ゼロから農業を学ぶのではなく、“継承”というカタチで梨農家の大先輩に学びながら、産地のなかで新規就農者が育つ仕組みも生まれつつあるといいます。

結果として、
  • 農家としての独立を目指す20代や50代
  • まちづくりを仕事にしたいと考えている若者
  • さらなる事業展開を考えている自営業者
  • 自分の好きなこと・得意ジャンルで創業したいと考えている人
  • 旅館で働きたいという方

こんな人たちと出会うことができました。

また、加賀市に移住し開業した方が、加賀市のふるさと納税に産品を出品したり、スマウト経由で移住し就農した方が、加賀市特産のパフェを考案したり。地域の活性化に大きな貢献をしてくれていると話します。

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評価と今後の活用
学びと改善を続ける“移住ポータルの第二の軸”としてのスマウト

田中さんが、スマウトで特に価値を感じている点は以下の3つ。

①ユーザーの興味関心がプロフィールから読み取りやすいこと
そもそも地域・移住に特化したポータルサイトであることから、効果的に顕在層にアプローチできることに加えて、ユーザーのプロフィールから「どんな記事に“興味ある”を押しているか」「移住意欲の段階」などが把握でき、企画案内の判断がしやすい。

②記事単位で反応を比較でき、改善ポイントをすぐ掴めること
どの切り口が刺さるのか、どの写真が効果的かなど、可視化されたデータが次の企画づくりに直接活きる。

③他自治体の成功例が横断的に学べること
スマウト全体の流れを追うことで、自分たちでは思いつかなかった切り口にも気づける。

今後は、受け入れ体制の強化やデータ分析を進めながら、体験から移住へつながる導線づくりをより精密にする方針。体験型企画を通じて「まずは来てもらう」仕組みづくりを進めており、スマウトの活用はその中心に位置しています。

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同じ課題を持つ自治体へのメッセージ
ユーザーの想いに寄り添った、挑戦を受け止める地域づくり

最後に、加賀市企画課の田中さん、「ぶなの森」山田さんからのメッセージを紹介します。

「2025年上半期スマウト移住アワードで1位をいただけたことは大変光栄です。この結果は地域の方々をはじめ地域事業者や関係人口の方々など、多くの方々の温かい支えと協力の賜物だと思っています。
一例ですが、移住者から地域の魅力を教えてもらうことが、自分たちの地域を見つめなおす良いきっかけとなり、その結果、効果的なプロモーションへと繋げることができると感じています。
例えば、農業にしろ観光業にしろ人手不足なので、“従業員として来てほしい”という側面が強くなってしまいがちです。しかしそうではなく、ユーザーにとって“やってみたかった業務がある”、“チャレンジさせてくれる空気がある”と感じてもらうことが、転職先として選ばれる決め手になるのではないかと思います。
“その人がやりたいこと”が実現できる地域としての魅力を発信するイメージで、環境づくりから頑張っています」。

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