「仕事」と「暮らし」がセットになったセカンドキャリア支援で、人手不足の地域企業と経験を活かしたいミドルシニア双方の課題を解決
地域とつながるプラットフォーム「スマウト」は、JOINS株式会社(本社:長野県北安曇郡白馬村、代表取締役社長:猪尾愛隆、以下「JOINS」)と連携し、地域企業とミドルシニアの転職希望者をつなぐマッチングサービスにおいて、サービス開始から8ヶ月(2025年10月時点)で10名(うち、50代以上が8名)のマッチングが成立したことをお知らせします。
人生100年時代を背景に、長年の経験を活かし「新たな仕事に挑戦したい」という意欲を持つミドルシニア層と、深刻な人手不足に悩む地域企業との間で、「移住や二地域居住を伴う転職」という選択肢が生まれています。「スマウト」と「JOINS」は、これを単なる転職支援ではなく、「仕事」と「暮らし」のライフシフトをセットでサポートする「移住転職」の支援と捉え、「地域企業のお仕事マッチング〜あなたにあったキャリアシフトをサポート〜」としてサービスを提供しています。
本取り組みでは、製造業におけるDX推進の経験豊富な元自動車部品メーカー部長(57歳)や、元東レグループの労務管理担当(67歳)など、豊富な経験を持つ人材が地域企業の即戦力として活躍しています。
この新しいキャリアの形である「移住転職」を支援することで、意欲あるミドルシニア層と地域企業をつなぎ、地方創生とセカンドキャリア支援の双方の課題解決を目指します。
社会背景:地域企業の課題とミドルシニアの意欲
地域企業の「人手不足」の深刻化と「シニア人材」への期待
今、地域企業の人手不足は深刻さを増しています。帝国データバンクの調査(2025年10月)によると、2025年度上半期(4~9月)の「人手不足倒産」は214件にのぼり、上半期としては3年連続で過去最多を更新しました(※1)。
こうした状況下で、日本商工会議所の調査(2024年9月)では、回答企業の約6割が「外部のシニア人材の受け入れに前向き」と回答しており(※2)、経験豊富な人材へのニーズが高まっています。

ミドルシニアの「セカンドキャリア志向」と「年齢の壁」への不安
一方で、ミドルシニア層のセカンドキャリアへの意欲も高まっています。産業雇用安定センターの調査(2025年7月)によると、大企業に勤務するミドルシニアのうち、50代後半の約4割が「定年前後または雇用延長後に転職・独立したい」と回答。「これまでと違う新しい仕事に取り組みたい」といった前向きな動機が目立っています(※3)。
この傾向は「スマウト」のユーザーにおいても顕著です。カヤックが2025年8月に実施した「スマウト」ユーザーへのアンケート調査では、地域に興味がある50代以上、235名のうち93.6%が、移住や二地域居住先での就業を希望していることがわかりました。しかし、「年齢を受け入れてくれるか不安」(152件)、「仕事が見つかるか不安」(102件)といった声も多く、意欲と不安が混在しているのが現状です(※4)。

9割超が「移住/二地域居住先での地域の仕事」を希望

「年齢を受け入れてくれるか」(152件)が最も多い不安要因
※1:帝国データバンク「人手不足倒産の動向調査(2025年度上半期)」 (2025年10月)
※2:日本商工会議所・東京商工会議所「人手不足の状況および多様な人材の活躍等に関する調査」調査結果(2024年9月5日)
※3 :産業雇用安定センター「ミドルシニア世代のセカンドキャリアに関する意識調査」(2025年7月)
※4:カヤック、「スマウト」ユーザーに向けた「地域との暮らし方、関わり方について」アンケート(2025年8月19日-8月31日実施、有効回答316件のうち50代以上235件を集計)
成果:「年齢の壁」を越える支援、8ヶ月で10名(うち50代以上8名)のマッチング成立
本取り組みは、経験やスキルのマッチングに基づいて行う一般的な転職サービスと異なり、「仕事」と「暮らし」の不安解消を多面的にサポートします。
移住を前向きに検討している「スマウト」ユーザーを中心に求人を行うほか、地域自治体などとも連携して住まいに関する相談などにも乗り、移住転職者の不安解消を多面的にサポートすることで、ミドルシニア層が「年齢の壁」を感じず、新たな環境への一歩を踏み出すことができています。
サービス開始8ヶ月で10名(うち50代以上8名)が即戦力に
「地域企業のお仕事マッチング」では、サービス開始以来、8ヶ月(10月時点)で10名(40代2名、50代以上8名)の移住・転職マッチングが成立しました。採用された人材は、製造業の品質管理、建設業の施工管理、海外営業、労務管理など、大企業や専門分野で培った高いスキルを有しています。
採用した地域企業からは「幹部社員の退職に伴う後任として、経験豊富な人材は非常に貴重」「社内だけでは限界があった生産性向上に対し、新しい視点やネットワークをもたらしてくれる」といった声が寄せられており、ミドルシニア人材が地域企業の即戦力として、また変革の担い手として期待されていることが伺えます。
「即戦力」として活躍するミドルシニアの事例(一部抜粋)
【事例1】57歳 男性 元・自動車部品メーカー部長(愛知県名古屋市)
→製造業の生産性改善業務(長野県下諏訪町で二地域居住)
■仕事の変化
これまでは愛知県の自動車関連の大手企業でDXや生産性改善の部長をしていました。今回はその経験を活かし、中小の製造業で生産性改善の業務を週3日の業務委託契約で開始。これは助走期間の位置付けで、来年以降は社員や役員への転換を見据えています。
■企業を選んだ決め手
面接で話したり現場を見たりしたことで、まだまだ伸び代があると感じました。
■暮らしの変化
これまでは愛知県の都市部で働いていましたが、いつかは長野県の自然に囲まれた地域で暮らし働くことが夢でした。今回、すごく気に入った下諏訪町に住居を借りて、そこで週3日滞在し、週4日は愛知県で過ごす生活を始めました。下諏訪町は、歴史、温泉、諏訪神社もあり、すごく楽しめています。
■地域を選んだ理由
企業との面接で長野県の下諏訪町を訪れた際に宿泊したゲストハウスの雰囲気や運営者の方、ほかの移住者の方々のあたたかさに触れ、惚れこんでしまいました。
■「移住転職」で不安だったこと
これまでの自分自身の経験で役に立てるのか、価値を出すことができるのかが不安でした。それをまずは業務委託契約の助走期間で実際に確かめることができるという点は、不安解消に役立ちました。
<採用した企業の声>
■採用背景
社内知見のみでの生産性向上に限界を感じ、外部コンサルも試しましたが、指示型の支援だけでは現場に定着しませんでした。「現場に深く入り自走できる人材」を求めていました。
■採用理由
大手企業で培った豊富な現場経験をお持ちであったことと、ミスマッチのリスクを抑えるため、助走期間として週3日の業務委託から開始できたことも不安解消に繋がりました。
■成果
2025年8月に着任したばかりですが、既に成果の兆しが見えています。現在は業務委託契約ですが、助走期間を終えて、今後は社員、さらには役員として活躍していただきたいと考えています。
【事例2】56歳 女性 元・社内システム担当(東京都町田市)
→教育事業のDX推進業務(岩手県盛岡市で二地域居住)
■仕事の変化
これまでは業務設計や開発を中心に、ITが苦手な人にも使いやすいシステムづくりを支援する仕事をしていました。現在はこの経験を活かしつつ、企業のDX推進を担う業務を担当しています。まずは業務委託契約から、リモート中心+月1〜2回の現地滞在で関わっています。
■企業を選んだ決め手
経営陣の誠実な姿勢、丁寧なコミュニケーションに強い好印象を持ち、「好感度ナンバーワン」でした。また、東京ー盛岡の距離の問題を考慮し、リモート中心・段階的に関わる働き方を提案してくれた点が、安心して関われる理由になりました。
■暮らしの変化
これまでは東京での生活が中心でしたが、月に数日間の盛岡訪問が前提となる働き方に変わりました。移動や滞在(現在は、盛岡訪問の際はホテル滞在)の調整が必要になったため、負担は増えましたが、数日滞在して仕事に集中できる点はメリットと捉えています。
■地域を選んだ理由
将来的に畑を持ちたいこともあり、山に囲まれた土地に憧れていました。当初は別の場所を希望していましたが、岩手の企業を紹介され選択肢として浮上しました。民話のふるさとである遠野が近いことは魅力的でした。
<採用した企業の声>
■採用背景
デジタル化を推進できる担当者が社内に不在であり、改善の方向性を示したり、業務の棚卸しを行って改善を根付かせる役割が必要であったことから、DX推進のための外部人材の導入を決めました。
■採用理由
社内の状況を丁寧に把握しながら、コミュニケーションを重視して改善を進める姿勢を高く評価しています。加えて、地方で働くことへの意欲があり、移住や地域との関わりにも前向きであることから、地域企業に根付く人材として期待できると判断しました。
■成果
経営陣から「バックオフィスは結構変わった」との評価があるように、改善提案から実行まで手を動かしながら進める姿勢が高く評価されています。また、提案の質も高く、「こちらが思いつかない視点を出してくれる」と評価されており、現場の意識変革にもつながっています。
【事例3】67歳 男性 元・東レグループ 労務管理担当(奈良県)
→製造業の労務管理業務(長野県長野市で二地域居住)
■仕事の変化
2023年に定年退職を迎えました。現役時代は、総務・人事の管理職や関係会社の社長を務めました。仕事柄、24時間気の抜けない状態でしたが、やりがいのある仕事でした。その後、大学の協力研究員などを経て、2025年6月から自然の中の工場で、人事課題や諸課題をじっくり考えて情報を整理し、自分よりひと回り若い社長に伴走しながらどうやって輝く会社を目指すか、そのために何をすべきかを考えています。
■企業を選んだ決め手
社長の人柄、明るい会社の空気感です。
■暮らしの変化
これまで45年以上、東京・大阪で生活を送っていましたが、コロナの経験で「密」から脱却し、豊かな自然環境で仕事をすることの貴重さを発見しました。現在は自然が豊かで、静かで、きれいな空気が思いっきり吸える環境で仕事をさせていただいています。こういう生き方もあることを次の世代の方にも伝えたいと思っています。
■地域を選んだ理由
南海トラフ地震などの災害リスクを回避する観点から、地方への転職を決断しました。
■「移住転職」で不安だったこと
二拠点生活となったため、旧来の友人たちとの物理的距離が大きくなる点が少し不安でしたが、今のところは杞憂に終わっています。
<採用した企業の声>
■採用背景
幹部社員の退職に伴い、後任人材の確保が急務でした。
■採用理由
経営陣や既存のほかの社員とマッチする(上手くやれる)かどうかを基準に考えたときに、この方とならやっていけそうだと思ったので採用を決めました。
今後の展望:「移住転職・副業」マーケットの創造へ
カヤック(「スマウト」)は「面白法人」として、地域社会の課題をクリエイティブな力で解決することを目指しています。今回の取り組みの成果とアンケート結果を踏まえ、「JOINS」との事業連携の中で今後さらに地方への移住転職や副業を希望するミドルシニア層と、その経験を求める地域企業とのマッチングを加速させていきます。
具体的には、長野県白馬村における取り組みを強化します。カヤックは白馬村や地域企業とコンソーシアムを組み、国土交通省の「二地域居住先導的プロジェクト実装事業」に採択されています(※5)。本プロジェクトにおいて「2025年度末までに5名の地域企業への就業・二地域居住者の流入」という目標を既に達成するなど、具体的な実績が出てきています。この成功事例を基に、都市部のミドルシニア層の「セカンドキャリア」支援と地域企業の課題解決を両立するモデルを確立します。
人生100年時代において、これまでの経験を活かし、やりがいを持って新たな環境で挑戦したいと考える方々と、そうした人材を熱望する地域企業を繋ぐことで、「移住転職・副業」という新たなマーケットを確立し、日本全体の活性化に貢献してまいります。
※5 カヤック、長野県白馬村・八十二銀行らと官民連携で、国土交通省「二地域居住先導的プロジェクト実装事業」に採択