地方移住において、人がある場所から別の場所に行き、その後元の場所に戻り住むことを「Uターン」と言ったり、生まれ育った地域から、どこか別の地方へ移り住むことを「Iターン」と言ったりするのは、きっと聞いたことがありますよね。今回ご紹介したいのは、「ソロターン」です。ソロターンとは、おひとりで移住すること。いまさら人には聞けないことも含めて、移住前にすべきことを、ご紹介します。
※ この記事は、ソロターン応援県である高知県との共同制作で作成しています。
<目次>
#00 ソロターンって何?
→ソロターンとは?まとめ
#01 地域と出会う
→地域と出会うためのまとめ
#02 移住前の準備をする
→【チェックシート】移住前の準備リスト
#03 移住後あるあるに備えておく
→移住後の備えのまとめ
#00 ソロターンって何?
まずは、「ソロターン」って、いったい何?を整理するところから始めましょう。
定義と、その背景にあるもの
「ソロターン」とは、単身での移住、つまりひとりで移住すること。これまでのように、大手企業で働き続けるのではなく、ローカルで暮らし、地方で自分のスキルを試してみたり、何か新しいことに挑戦したりする人が目立つようになりました。人それぞれに何かしらの目標を描いて、ローカルで新しい一歩を踏み出すことを「ソロターン」と呼び、応援したいと思っているのです。
自分ですべてを決められることを最大限に楽しむ
「ソロターン」の最大の特徴は、すべてを自分ひとりで決めることができること。何の制約もなく、思いどおりに決断ができることです。森や海といった自然のそば、自分の趣味中心の暮らし…。誰かと意見をすり合わせたり反対も受けることなく、思うままに行動できることを、最大限に楽しみましょう。
自分ともう一度出会い直す機会
そしてもう一つ、ぜひお伝えしたいのが、暮らす場所や働く環境を変えて、もう一度自分と出会い直す機会をつくれるということ。何かしら不満を感じていたことがあるなら、たとえ同じことだとしても、がらっと環境を変えることだってできるんです。ところ変われば、出会う人も変わる。これまでとは違う新しい人生が、開けるはずです。
#01 地域と出会う
では、「ソロターン」したいと思ったあと、具体的にどのようなステップで地域と出会うことができるのかを整理しましょう。
自分にフィットする地域を探す
(1)これまでの旅行先で好印象だった場所や、実家などを書き出す
まず、これまで行ってみたことのある場所をリストアップしてみましょう。そして、行きたいけどまだ行っていない場所も。ご実家が遠方なら、その場所も地図上にピンを立てます。その上で、ここに住むことは考えられない、という場所があれば、リストから外していきます。そして、なぜそこを好印象だと思ったのか、自分の気持ちを整理してみましょう。
(2)人口規模で考えてみる
次に、そのまちの人口を調べてみましょう。人口1,000人以下だと、地域のなかでのコミュニケーションは豊かで、カフェやゲストハウスがない場合も。人口3,000人程度だと、カフェはあっても美容院は隣町、ということも。地域の人とのあたたかいつながりに期待できそうです。人口50,000人を超えると、車で30分も行けば自然もあるけど、基本的にまち。イメージに合うまちのサイズを考えてみましょう。
(3)どのくらいの利便性があったらいいかを考えてみる
「住めば都」というくらいなので、利便性があってもなくても、最終的には問題ないのかもしれません。でも、まちを絞る必要があれば考えてみたい項目です。ローカルでは、⚪︎⚪︎駅から徒歩10分圏内といった物件の探し方も難しいかもしれません。コンビニがないとダメ!おしゃれなカフェは必須!充実した書店が車で30分以内にほしいなど、譲れない条件をあげてみましょう。
(4)マッチングサイトでの検索/リアルフェアSNSなど
その次にやるべきは、移住先を探すマッチングサイトや、移住フェアなどを使ってみること。既に具体的にまちを絞ることができていれば、そのまちの移住関連情報Webサイトは必ず目を通しておきましょう。ここでのポイントは「どんな仕事がありそうか」。手に職のある人も、まちの雰囲気を知ることにつながりますよ。
地域を絞り込む
(1)やりたいことを軸に探す
ここまでで、ある程度の地域は見えてきたでしょうか。ここから先は、地域を絞り込む作業です。まず第一に、そもそもやりたいことがあるのであれば、それが大きな柱となります。「炭火焼きコーヒー焙煎」の店舗をもちたければ、「炭焼き」というキーワードで地域が見えてくることも。あるいは、趣味の「サーフィン」を続けたいという思いがあれば、最高の波がある場所、といったイメージです。
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(2)近くのまち、新幹線停車駅、空港までの距離や時間を確認する
挙げてみた地域を、路線図や空港、高速道路といったアクセス面から一度整理してみましょう。空港から車で1時間、新幹線停車駅からさらにローカル線で30分、など距離感をつかむと、移動が苦にならない自分なりの条件を整理することにつながります。いまは駅から徒歩10分圏内に暮らしているという人も、地域のゆとりのある時間感覚をイメージしましょう。
(3)お試し移住や交通費補助など、移住施策を確認する
そのまちや県のWebサイトは、一度は確認しておきましょう。移住に向けた支援制度は、あとから見つけても手遅れです。例えば高知県のWebサイト「高知家で暮らす。」ではお試し滞在施設を一覧でみることができ、短期(1日〜)や長期(1ヶ月〜)といった利用期間での絞り込みも可能。レンタカーや引越し費用の割引きなど、お得な会員特典のある「高知家で暮らし隊会員制度」や、起業支援制度などもあります。
→知っておきたい支援制度(高知県)
(4)カフェやレストラン、ゲストハウスなど行ってみたい場所を探す
まちなかに、ふらっと立ち寄りたい場所があるといいですよね。カフェやレストラン、ゲストハウスなど、行ってみたい場所を探しておきましょう。もちろん、緑に囲まれた自然豊かな環境で静かに暮らしたいという人は、近隣になくてもいいのですが、店舗の数やおしゃれ度は、ウォッチしておくとよさそうです。
(5)その土地で会ってみたい人を探す
もう一つ「人」という軸で調べておくと、いつかそれが移住の決め手につながることもありえます。インタビュー記事を読んでみたり、カフェオーナーを調べてみたり。実際にお会いできそうな人をピックアップしておいて、実際に現地に足を運ぶ際には、事前に連絡をとってみることをおすすめします。
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(6)絞った地域の情報収集
情報収集には、さまざまな手段があります。現地体験の案内情報を移住ポータルサイトで集めたり、先輩移住者のインタビュー記事はもちろん、役場の移住相談窓口への相談も。移住スカウトサービス「SMOUT」でお仕事情報を調べたり、その他求人サイト、住まいに関してはそれぞれの市町村の空き家バンクも見ておきましょう。
(7)実際に行ってみる
実際に地域に足を運んでみると、やっぱり素敵な場所だった!と思えたり、あるいは、印象とは違った、ということもありえます。行ってみることで移住のステップがぐっと進むことも。季節や天気によっても印象は異なるため、迷いがあるなら、別の季節にもう一度行ってみるのもおすすめです。短期間の滞在ではなく、できれば長期間のお試し滞在をしましょう。
#02 移住前の準備をする
(1)仕事を考える
移住に向けて、どこでも仕事ができるスタイルであれば問題ありませんが、企業勤めの方は、事前の準備が必要になりますね。転職するか、業務委託など出社を前提としない雇用形態への変更を交渉をするか、現地で探すか。働きかたを見直す機会でもあるため、お試し滞在施設を拠点としながら、高知県の場合は、一定期間(2週間~1ヶ月程度)滞在し、企業や農家などで働きながら住民と交流を持つ「ふるさとワーキングホリデー」制度を利用するのもいいですね。転職の場合、最終面接は現地の場合が多いため、住まい選びと合わせて進められそうです。
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(2)住まいを見つける
どうしても避けて通ることができないのが住まい選びです。とはいえ、ひとまずまちの中心地でアパートやマンションなどを借りておき、その地域を見渡せるようになった頃に、本当に住みたい場所に暮らす「二段階移住」という手も。気に入ってしまったら、即購入!のケースも少なくなさそうです。畑がほしいなど諸条件を見定めておいたり、改修が必要な箇所や費用を見積もっておくことも重要です。
(3)暮らしをイメージする
さらに事前に必要なことは、運転免許を取得していない場合は、必要になるケースもありそうです。また免許はもっていても、車を所有していない場合は、入手の検討も。スーパーや病院、図書館、役場といった普段暮らしのなかで行く機会がありそうな場所は、俯瞰してチェックしておくと良さそうです。また、どんな暮らしを実現したいのか、明確に整理をすることは、これからの生き方を考えるうえでも大切になりそうです。
(4)移住前に必要な手続きを整理する
移住先が決まったら、移住前に必要な手続きを整理しておきましょう。住民票まわりや、住まいの引っ越しにまつわることなど、やるべきことが多岐にわたります。特にお子さんのいるご家庭は、学校や幼稚園、保育園など用意周到に進める必要があります。チェックリストを用意しましたので、ぜひ使ってみてください。
#03 移住後あるあるに備えておく
(1)地域コミュニティを調べておく
もう一歩踏み込んで備えておきたいのは、移住後の地域コミュニティの把握です。住まいの地区の区長さんはもちろん、お子さんがいるなら小学校や子ども会(育成会)、地域のお祭りや清掃当番など、どんな行事があるのかを調べておくと良さそうです。いきなり飛び込まず、役場の担当にヒアリングをしたうえで、関係人物の整理から始めましょう。
(2)ごあいさつを丁寧に
地域で大事なことは、顔を知ってもらい、信頼関係を築くこと。ご近所さんはもちろん、町内の区長さんなどへもごあいさつをしておきましょう。その地域によって、引っ越し時の慣習があるケースも。相談しやすそうな人を見つけておくとよさそうです。ローカルでは地域ごとにごみ収集場所の清掃などが当番制になっていることが多いため、ごあいさつと共に、暮らしにまつわる必要な情報を詳しく聞いてみましょう。
(3)知っておきたい移住支援制度のおさらい
最後に、移住前に、移住支援制度をざっとおさらいしておくことをおすすめします。後から知っても遅いケースがあるからです。また、移住後のサポート窓口を探しておくのも忘れずに。例えば高知県では、民間団体で構成する「高知家移住促進プロジェクト」や、身近な地域で相談役になってくれる「地域移住サポーター」が、移住後の高知暮らしをサポートしてくれますよ。
文:SMOUT編集部