暮らし手が、まちを変えていく。空き物件見学会から始まる、山梨県甲府市の“リノベーションまちづくり”

都心から特急で90分の山梨県甲府市。武田信玄の生誕地として知られ、果樹栽培やワインなどの食、駅近の低山から上級者が挑む南アルプスの自然など、さまざまな魅力にあふれたまちです。2000年代前半は駅前市街地のシャッター化を中心に深刻なドーナツ化現象が進行していたものの、近年は少しずつ盛り返しの機運が感じられるように。これは、地道な活動を行ってきた先駆者を手本に育った若いUターン組や、自治体の中でも若い世代の動きの結果でもあります。そんな活動の一つが、LLCまちづくり甲府とゆたかな不動産が共同して行う「甲府まちなか空き物件見学会」です。

その活動について、ゆたかな不動産のメンバーでありPRIME KOFU代表の建築家、鯉淵崇臣さんとLLCまちづくり甲府の渡辺一博さんにお話を伺いました。また、空き物件見学会などを通じて物件と新しい暮らしを見つけた旅道具トラヤの浦壁利裕さん、ゲストハウスNAP bed and loungeオーナーの吉田陽祐さんと、まちのキーパーソンとしてLOCAL STANDARD代表取締役の大木貴之さん、五味醤油代表取締役の五味仁さん、甲府移住・定住コンシェルジュ成澤治子さんの5名のみなさんにもご登場いただきました。

最強の起業バックアップチームを揃えた「甲府まちなか空き物件見学会」

「甲府まちなか空き物件見学会」(以下、空き物件見学会)を運営するLLCまちづくり甲府は、甲府商工会議所と甲府市、山梨中央銀行、関係商店街協同組合の出資で2009年に設立された法人です。現在の住民と未来の住人、来訪者が安心して暮らせる豊かな環境や社会づくりを使命に、“甲府のまちなかの価値を高める先導役”として「甲府まちなか不動産バンクサポートサイト」の運営や「移住希望者対象マッチングツアー」の開催など幅広い活動を行っています。

空き物件見学会が始まったきっかけは、2016年に甲府市で開催された空き物件を活用して事業をつくる実践型スクール「リノベーションスクール」。講師の倉石智典さんが長野で行っている空き物件の利活用事業をヒントに、甲府でも活動ができないかとの意見が出たことでした。中心街の空き物件を紹介する市の「甲府まちなか不動産バンク」はあったものの、活用されていない状況もあったのです。

写真左:鯉淵崇臣さん、写真右:渡辺一博さん

渡辺さん「そこで弊社がサポートに入って新たにサイトをつくり、空き物件と中心街で事業をしたい方をマッチングする空き物件見学会も月1回行うことにしました。反応はかなりよくて、2017年は18件、2018年は13件の成約につながりました。今では駅近物件はほとんど埋まっている状態です」。

物件探しは、地元の不動産屋に協力を仰いだり、所有権不明の物件を自社で登記確認や登録したりと足で集める地道なスタイルだそう。「まずはやってみよう」と手探りで始めた活動でしたが、今では立派な成果として実を結んでいます。

渡辺さん「建物やブランディング面はゆたかな不動産側、事務面はまちづくり甲府側で請け負います。補助金申請は甲府市役所商工課、事業計画は商工会議所、融資は山梨中央銀行でサポートできるので、空き物件を見にくるだけで、設計や施工から補助金の相談までができてしまうのです」。

きけば、かなり強力な布陣です。この活動をともに進める一人が、ゆたかな不動産のメンバーで建築家の鯉淵崇臣さん。国内外で活動した後、甲府市で建築事務所PRIME KOFUを立ち上げて多くの建築設計を行っているUターン組です。リノベーションスクール開催時、倉石さんのサブユニットマスターとして関わっていたことが参加のきっかけでした。

空き物件見学会の様子

鯉淵さん「以前から、空き店舗や空き家のオーナーさんの相談窓口が必要ではないか、不動産屋に相談する以外の選択肢を増やせないかと考えてきました。そのために、設計事務所、工務店、不動産屋、企画デザイン事務所の4社が集まる合同企業体として生まれたのが、ゆたかな不動産です。オーナーさんにとって最もよい形になることが一番の目標なので、物件自体の価値や収支計画、周辺環境も加味して提案します。ですからリノベーションも新築も扱いますし、単なる建物の活用だけでなく事業運営を含めた相談なども、県内のコミュニティを活用して対応できるようにしています」。

「その土地にどれだけ愛があるか」

ハードとソフトをつないでいく鯉淵さん。その際に新築とリノベーションを等価に考える理由を通じ、まちづくりへの想いや意義を教えてくれました。

鯉淵さん「僕はこうした活動を『まちのリノベーション』と捉えています。まち単位で捉えると、新築もリノベーションも一つの手法となるんです。安易にリノベーションブームに答えを求めるのではなく、適材適所でよりよい解決策を考えたいと思っています。また、僕を含めたUターン組や移住組の多くは30代〜40代くらい。Uターンして事業を興したい、地域で新たに暮らしたいと考える見学会参加者とも近い世代なんです。震災以降、『地方』や『地域』に豊かさを求める共通認識が生まれてきているので、この活動ができるのは、その両者をマッチングさせられる時代が来たからこそだと思っています」。

鯉淵さん自身も、Uターン後はまず甲府市内でのコミュニケーションを広げることに注力したといいます。震災後、福島県での空き家リノベーション活動を通じ、真摯な地域への想いとコミュニケーションの重要性を学んだのです。

鯉淵さん「地域のまちづくりに大切なのは、その土地にどれだけ愛があるか。そして、いかに官民が歩み寄り、双方の強みを活かして進められるか。まちづくり甲府のように半公半民の団体だと、皆さんもやはり安心してくれやすいんです」。

東京での暮らしに加え、オランダとイギリスへの留学経験もある鯉淵さんは、山梨と東京はもちろん日本と海外という視野で客観的に見られる強みがあります。そこで甲府の地域特性と課題、その改善方法を伺ってみました。

鯉淵さん「人口減少や過疎化が問題視される地方では、少ないパイを奪い合わなければならない、つらい現状があります。東京近郊という土地柄や、よく言われる、郊外の大型ショッピングモールの影響。それらはどうしようもないデメリットではありますが、一方で山梨のコミュニティの狭さは、うまく使えば何かを興すときに大きなメリットになります。目標が定まれば東京以上に進むスピードは早いんです」。

ただ、東京と田舎の論理が混ざり込んでいる地域柄、人間関係のバランスを図る難しさがあることも否めません。それでも甲府のまちをよくするため、地道に活動を進めたいと語ります。

鯉淵さん「とはいえ、建築家のできることは、あくまで既存の甲府のよさを強める器や空間づくり。五味醤油の五味さんやフォーハーツの大木さんたちのように、地域資源自体をドライブさせてソフトを生み出す人々の活動を、ハード面から応援していければと思っています」。

遊休不動産の可能性を探す、日常になじむまちづくり

取材場所になった、鯉淵さんがリノベーションを手がけたシェアスペース「studio pellet」。ゆたかな不動産メンバーが事務所やショールームを構えるシェアオフィスであり、ペレットストーブのショールームであり、レンタルスペースであり、山梨の果物を使ったお菓子を提供するカフェでもあり、と甲府の面白い人たちが集まっている。

空き店舗や空き家も、見方を変えれば不動産資源です。それらを負の遺産にせず、いかに次の世代に継いでいくべきか。空き家を考えることは将来、空き家になってしまう可能性を持つ新築のあり方を見直すことでもあるので、新たな建築の仕組みを僕らが考えてなくては、と前向きな言葉が飛び出します。

確かに、空き物件見学会を通じたまちづくり活動は少しずつ実を結んでいます。たとえば、駅前から1kmほどにある柳小路。スナックや飲食店が並ぶ路地の合間にゲストハウスNAP bed and loungeが見学会を通じて完成し、個人でリノベーションを進めていたイラストレーター夫婦のアトリエ兼ショップが同時期にオープンしたことで、新たな人の流れが生まれていきました。また現在、リノベーション中の3件目はNAPの別館。1階がレンタサイクルショップになる予定です。

鯉淵さん「僕らとは別ルートで柳小路にお店を開く人も出てきていますし、いい効果が生まれています。あるエリアに自然発生的に人が集まって人を呼び、徐々に周辺に広がるような形が理想だったのでうれしいです。強引な手法だと周辺とギャップができ、非日常的な再開発になりかねない。それだと郊外型ショッピングモールと同じです。地方のまちづくりは、日常をつくる視点と周りになじむような広がり方が重要なんです」。

市街地の空き店舗対策に続き、今後は公園ほか公共建築にも取り組みたいと語る鯉淵さん。渡辺さんもその言葉に肯きます。

渡辺さん「市のお荷物になっている公共の不動産を民間に開放して活用してもらうPRE(Public Real Estate)戦略として、公園の活用を考えています。行政は収益の一部をもらうことで維持管理費用を抑え、民間企業さんはそこで新規事業や魅力的な場所づくりを行ってもらうことでまちづくりに参加していただく。そうすれば魅力的なソフト開発や集客を通じ、公共施設のよりよい使い方ができるんじゃないかなと。行政はその辺の規制緩和や共同事業が下手なので、まずは新たなスキームをつくるための検討ができればと思っています」。

鯉淵さん「逆に公共でしかできないこともあるので、役割をうまく使いわけられるといいですよね。かつては、建築や運営のプロでもない行政にすべてが任されていて、クレームをすべて受ける状況になっていた。それでは市民も行政もお互いしんどいです。協働して街をつくっていく意識が大事だと思っています」。

実証実験はなんと今年中に行われるとのこと。渡辺さんは、芝生公園に民間投資による拠点施設を整備し、集客や魅力的な公園づくりができることを社会実験を通じて検証した上で、来年度以降に繋げたいと語ります。見学会だけに留まらず、これからの大きな展開を控えた甲府のまちづくり。今まさに進行中の活動に目が離せなさそうです。

甲府に、物件と新しい暮らしを見つけた人たち

空き物件見学会のメンバーが物件を紹介した方々にも、実際にお話を伺いました。浦壁利裕さんは工房、吉田陽祐さんはゲストハウス。形は違えど、メンバーたちの手を借りて始めた新しい甲府での暮らしは、今どんな感じでしょうか。

浦壁利裕さん(TORAYA EQUIPMENT

日本各地を訪れ対面でのみ販売。自らも旅をする旅道具屋 TORAYA EQUIPMENTの浦壁さんが、家族で甲府に移住したのは2018年のことでした。お子さんが生まれたことで、自然との距離が近く、東京に住むご両親とも会いやすい甲府に拠点を移すことに決めたのです。

そんな浦壁家の住居が決まり、新しい工房を探していた頃、たまたまテレビで空き物件見学会のニュースを見て、五味さんに相談をしたことをきっかけに、いくつかの物件を紹介してもらうことに。五味さんや渡辺さんの協力もあり、いくつかの問題があったものの、無事に解決し契約へ。「最終的には不動産屋さんの扱う物件を借りることになりましたが、自分たちだけだったら出会えないような物件をたくさん見比べることができ、とてもありがたかった」と言います。甲府での暮らしはこの時で8ヶ月。

浦壁さん「移住したての頃は、地域コミュニティについての不安もありましたが、地元の人々や移住者を中心に、いい雰囲気をつくってくれていることがわかってきました。少しずつなじめてきた今は、甲府を選んでよかったと思っています」。

たくさんの移住候補地を見比べたなかで、「甲府中心地の人の少なさに最初は驚きましたが、すでに完成された地域よりは、これから盛り上がろうとしているこの街に魅力を感じた」と言います。そして前職で地域振興に携わっていたこともあり、今は自分たちの仕事を通じて地域貢献できればと考えているのだそう。

浦壁さん「地域振興の仕事をして見つけたひとつの答えは、自分たちの生業が必要ということでした。基盤があるからこそまちのためになることができます。だから今はまず生業を地域に定着させることが優先。自分たちを何者か知ってもらった上で、仕事を通じて地域に貢献していきたいです」。

旅がテーマのブランドらしく、自分たちの工房に旅をしに来てほしい、旅する人たちの集まる楽しい場にしたい、との想いがあるそう。ゆくゆくは、旅人だけでなく地元の人々にもまちを自転車や徒歩で回る楽しみを提供したいと語ります。

浦壁さん「まずは私たちの工房を、駅からの徒歩圏を広げるためのひとつの目的地にしたい。そんな拠点が近くに少しずつ増えていけば、今はまだ点ですが、だんだんと線になり、いつかは面になっていくのではないかと思っています」。

吉田陽祐さん(NAP bed and lounge

吉田さんは、柳小路にある小さなゲストハウスのオーナーです。2006年、大学進学を機に山梨で暮らすようになり、甲府の魅力に開眼。東京の建築会社に就職したものの「山梨に宿をつくりたい」と2015年にUターンし今に至ります。

場所は、空き物件見学会を通じて見つけた元スナックの物件。大工さんにも協力してもらい、吉田さんと仲間たちがほぼDIYでリノベーションしました。個室は2室のみですが、1階のラウンジでは、宿泊者以外も気軽にハンバーガーやクラフトビールも楽しむことができます。オープンからはまだ1年ほどですが、今では地元の人はもちろん県外から訪れる旅人にも注目される場所に。小さなゲストハウスだからこそ、の距離の近さもポイントです。吉田さん自身、初の韓国人ゲストが宿泊した際には、元から韓国好きだったこともあり意気投合。ラウンジに飲みにきていた友人たちとともに韓国での再会を約束し、7月にはなんとその約束を実現してしまいます。3日間の韓国での手厚いアテンドと感動の別れを経験したと語ります。

吉田さん「たった1日の出会いが、今後の人生における大切な出会いを生むんですよね。我ながら『napはいい宿だなあ』と思いました」。

また甲府のよさを伺うと、甲府から山梨の端まで1時間で回ることができ、果物や温泉、人がたっぷり楽しめる「モノコトヒトがぎゅっと集まったコンパクトシティ」とも。

吉田さん「うちの宿に来ていただければ、甲府のどんな魅力も案内できますよ!」

近年、ゲストハウスは、そこに行けばそのまちがわかると言われるほど、旅人にとっては面白く、かつ重要な空間となっています。通りに、まちに開き日々訪れる人たちに大切な出会いを提供する。そんな思いで運営されているnapなら、甲府の魅力も十分感じることができそうです。

甲府のまちに欠かせないキーパーソンたち

そして最後は、空き物件見学会にも関係が深い、甲府で長年活躍し、まちを盛り上げてきたキーパーソンたちをご紹介しましょう。

大木貴之さん(LOCAL STANDARDフォーハーツカフェ

一人目は、LOCAL STANDARD代表取締役の大木貴之さんです。Uターン直後の2000年、シャッター街だった市街地に最先端の食が楽しめる「フォーハーツカフェ」を開店。クラフトビールと甲府ワイン、地元野菜のメニューに注力し、現在は甲府市内に3店舗を展開しています。また甲府のワイナリーを回ってワインを楽しむ「ワインツーリズム®」を立ち上げた先駆者です。

大木さん「お客さんに、ワインが売れないから廃業を考えているという老舗ワイナリーの方もいて。山梨なのにこれではダメだと山梨のワインを中心にしたんです。でも地元ではよさがなかなか伝わらず、そこで全国から参加者を募ってワイナリーを訪れるイベントを企画しました」。

最先端の取り組みをしているのに地元では伝わらない。苦労した自らと生産者たちの気持ちを重ね合わせ、彼らの想いをメディアに売り込む一方、店では生産者とお客さんが飲める機会をつくっていきました。大手のビールや海外のワインを飲んでいるうちは、地元にお金が回らないと懸念を抱いていたことも理由の一つ。

大木さん「この仕組みを変え、甲府に山梨のワインが地元に根づいて皆が飲むような日常をつくることこそが、僕世代の役目だと考えてやってきました。今よくSDGsの話が出ますが、そうした考え方は地方こそ当たり前にしていかないと、なんです」。

活動の甲斐あって、今や甲府ワインを出す店は甲府で70件に増加。ただ人口が増えない甲府で飲食店ばかりが増えてしまい、消費の限界に来ている状況だと言います。これからは地方と都市における、消費と生産のサイクルを整える必要がある、とも。そこで活路を見出しているのが、先ほど話にも出た、都市圏からの参加者が多いワインツーリズムです。

大木さん「山梨はワインですが、これは地場産業ならどこでも同じ仕組みがつくれます。産業群が復活すると若い世代も戻り、地域に力が戻る。そのためには生産地まで見に来てもらい、生産者が何を思っているかを知ってもらわないといけません。それが人口減少に負けない人の流れに繋がります。生産者と商品が地元で食文化として根づくには、地元の人々に『地元に○○があってよかった』と思わせること」。

2000年代の甲府の変遷を飲食店の立場から冷静に見つめてきた大木さん。「20年も関わっていると、いろいろ見えてくるんです」という言葉には、よい時も苦しい時もまちとともに過ごしてきた人ならでは想いが詰まっていました。

五味仁さん(五味醤油KANENTE

創業151年の老舗醤油店「五味醤油」代表取締役、五味仁さんは6代目。大学卒業後にUターン後、歌って踊れる味噌づくりユニット「発酵兄弟」を妹さんと結成し、全国で出張味噌づくり教室を開いてきました。2017年に敷地内へ「食の公民館のような存在にしたい」と多目的スペース「KANENTE」をオープン。特に告知はしていないにも関わらず、冬の間の味噌づくり教室は、県内外のお客さんで毎回満員の人気ぶりです。

五味さん「味噌づくり教室は、簡単に言えば会社を続けるための一つの策です。味噌づくりの秘密を教えるなんてという方もいますが、本来、味噌は各家庭で仕込むもの。3.11以降、出所のわかる素材でつくりたい人も増えていたし、会社云々以前に味噌づくりの文化が残ってほしいという想いもあったんです」。

商家として長年甲府に暮らしてきた五味家。まちの中でどのような役割を果たしてきたのかを、6代目の目線から教えてもらいました。

五味さん「味噌や酒のような醸造業は、ある程度財がないとできない仕事です。小作人からの年貢を活かして酒や味噌をつくる商売だけに、当時から各地域のハブ的存在にあったと思います。今は社会構造も変わって役割は見えにくくなりましたが、DNAには受け継がれている気がするんですよね。物流の一番いい所にあるし、今は次世代とコミュニケーションを取る上でもいいハブになっていると思います」。

すでに、後輩が切り盛りするAKITO COFFEEなど、次世代の挑戦を後押ししている五味さん。KANENTEを小倉ヒラクさんの発酵ツーリズムツアー、東京・谷中の複合施設HAGISOやtokyobikeの研修ツアーの拠点とする中で、地元、甲府、都心とさまざまな地域の人の動きを変えつつあります。またここ5年ほどで、甲府に移住もしくはUターンして五味さんと活動する30〜40代も増えてきたことを感じるそう。

五味さん「東京で建築家として働いていた鯉淵さんを始め、デザインの第一線で経験を積んだ人たちがUターンして、甲府を拠点に活動しているんです。何かをするにしても東京に外注する感じだったのが、今ではすぐ形になるしスピードが早いんです。移住者も、旅道具トラヤさんやヒラクくんのようにイケてて実力を兼ね備えた人が多いですね」。

今後は、温泉を掘ってみたいという五味さん。工場や自社のヤマゴ味噌ほか日本各地の調味料を扱う併設店舗の紹介も含め、終始飄々とした雰囲気で取材場所に出没してくれました。他の人が魅力を感じて引き寄せられる理由も、少しわかった気がしています。

成澤治子さん(こうふコンシェルジュ)

甲府出身、都内の大学を卒業して民間企業で働いた後、甲府市役所に就職した成澤さん。現在は市の甲府移住・定住コンシェルジュとして、移住を考える人々や迷いのある人の相談に乗る仕事をしています。首都圏での出張移住相談会なども行いながら、人生の大きな決断である移住をスムーズに進めるお手伝いがしたいと日々活動中。甲府のいいところも大変なところも知るアドバイザーとして、たくさんの人の背中を押してきました。

成澤さん「移住された方から『おかげさまで楽しく暮らしています!』と、その後の暮らしを教えていただけると、ああコンシェルジュをやっていてよかったなと思います」。

移住前の相談だけでなく、移住後のフォローももちろん行っています。でもけして形式張ったものではなく、たとえば、地ビールフェスタや蔵出しワインバーなど甲府ならではのイベントに、移住者みんなで集まってワイワイ楽しもうといった形。地元のお酒のおいしさも手伝って、誰もが初対面ながら自然と交流が始まっていく……。そんな人の繋がりができていく様子を、そっと見守っているのだそうです。

成澤さん「甲府らしさと言えば、ゆるく、深く、浅く、そして楽しく人が繋がっているところでしょうか。そこからお仕事やプライベートにつながることも多いようです。顔見知りになっても、つかず離れずのいい距離感も保っている。そんな田舎と都会のちょうど中間という人間関係も、ここのいいところだと思います」。

若い子が新しいお店にどんどん挑戦しているのが嬉しい、とも。「そのお店がまたいいカンジの所ばっかりなんですよね」と、人のよさや新しい世代の面白さを熱く伝えてくれました。

「甲府まちなか空き物件見学会」がめざすまちづくりと、まちをつくる甲府の面白い人たち。取り組みの内容やみなさんの言葉を伺うたびに、今の甲府の面白さや魅力が伝わってくるかのようでした。さまざまな動きの中で、今まさに変わりつつある甲府。興味を持った方はぜひ一度訪れてみてください。

※この記事は、山梨県甲府市のご協力により制作しています。

文  木村 早苗
写真  池田 礼

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