移住地で仕事を見つける? 移住地へ仕事を持っていく? 移住をしたい2,852人の現在の職業から考えてみた

「数字で読み解く移住のいま」は、毎回ひとつの調査データを元に移住に関するさまざまな可能性を考えていく連載です。移住について「噂には聞くけど実際はどうなの?」という、まだイメージの段階という方も多いのでは。そんなイメージにはっきりとした輪郭をつけてくれるのが、実際の人々の声を集めたデータ。今回は「移住者と職業」のデータを参考に考えてみました。

このデータを見ながら、私自身も出張先や帰省先でも仕事をするようになったのはいつ頃からだったかと考えてみました。数年前にテキストツールとノートパソコン一台だけでいいなと実感したのですが、まだノマドワークという言葉はなかった頃です。仕事は固定の仕事場でするのが一般常識で、会社員の友人には「どこでも仕事ができるなんて!」とよく驚かれていました。

それから数年。パソコンを始めとしたツール性能の向上、そして厚生労働省の「働き方改革」関連法案が施行されたことで、場にこだわらない働き方をする人が少しずつ増えてきました。これは、私たちの人生設計や暮らし方に選択肢をもたらす好機会とも言えるのでは? 「働き方」の一般常識を捉え直せば、新たな自分の可能性だって見えてくるかもしれません。

新しい働き方を考えると「移住」が見えてくる?

では改めて、「移住者と職業」のデータを見てみましょう。これは移住スカウトサービス「SMOUT」が地方への移住を考えている「SMOUT」ユーザー登録者2,852人(※)を対象に、現在の職業を独自に調査したもの(複数回答可)。

その数値を見ていくと、実に登録移住者の約半数がクリエイターとされる職種を回答しているのがわかります。内訳としては、マーケター/PR(303人)やプランナー(273人)などの企画職、エンジニア(238人)やライター・エディター(268人)、デザイナー(193人)など。また起業家(281人)やコンサルタント(301人)など、事業主や企業調査・研究に関わる職業が多いのも特徴です。一方で、フリーターやノマドワーカー、旅人と名乗る層もかなり存在しているのが面白いところです。果たして、何でもやる人なのか、何もしない人なのか……。

「SMOUT」ユーザー登録者に聞いた現在の職業(複数回答可)

「SMOUT」ユーザー登録者に聞いた現在の職業より、クリエイターの内訳(複数回答可)

農家や漁師、醸造家など、初期投資や準備が必要な職種と比べると、自然環境に囚われないという意味でクリエイターやコンサルタントなどは比較的身軽な職業です。だからこそ、新たな「働き方」を考えた時に移住を選ぶ(移住してもやっていけそうだと考える)人も多いのでしょう。

※2018年12月10日時点

移住先に仕事を持っていく

では、新たな「働き方」とは具体的にどのような方法があるのでしょう。

たとえば、今インハウスのクリエイターであれば業務形態の変更があります。勤務条件が柔軟な業務請負の形に変更する、独立を考えているならこの機会にフリーランスになる手も。また近年は半社員、半フリーランスに近い勤務制度を敷く企業も増えてきていますので、転職を考えているなら検討してみるのもよさそうです。

起業家やコンサルタントで地方に興味がある人ならば、仕事の強みを特に活かせるよい機会です。「専門領域×地域」というように、自分の強みに住みたい地域を掛け合わせてみては? 逆に、こんな仕事ができそうだということで住む土地を考えてみてもよいかもしれません。自分なりの方程式を応用する面白さ、唯一無二のビジネスとして地方をより活性化させる可能性ややりがいを実感できるかもしれません。

どちらもポイントは、固定された「働く場所」を捨てること。平日は都心、週末は地方という2拠点居住などから徐々に始めてみるのもお薦めです。たとえば、『どこでも地元メディア ジモコロ』のエディター徳谷柿次郎さん。あるきっかけから長野県に興味を持ち、2年間で約30回ほどの往復を経て、2017年に長野へ移住。現在は編集プロダクションでWebメディアの企画編集を本業として行いながら、長野市に開いたお店「シンカイ」を運営しています。地元民と東京からの来訪者をつなぐ場の提供者として、また長野の情報発信のキーマンとして活躍される様子は、まさにクリエイターが移住でつくりあげた新しい働き方です。

そして、彼らがしなければ一体誰が移住するのか、というフリーターや旅人。世界中のどこでも自由に暮らせる世の中をつくる考え方「Living Anywhere」をまさに先取りしているかのよう。好きな場所を見つけられるという自由さを武器に、新しい働き方における移住の力を提示してもらえるかもしれません。

これらは、移住先に仕事を持ち込み、続けていく場合のほんの一例です。自分の強みと実績(と肩書き)、そして準備があれば、仕事も軌道には乗せやすいでしょう。地方は都心に比べると物価が安くなる場合が多いので、従来の仕事に加えて移住先で新たにクライアントを開拓することで、暮らしの質をよくすることもできます。

また、人口の東京一極集中を和らげ、地方の活性化にもつなげる狙いで、2019年度には、東京23区から地方に移住する人に補助金を配る制度が設けられるのだとか。地方に移住して起業した場合は300万円、中小企業に転職した場合は100万円を支給。そう聞くと、起業をするなら地方で、という考えも浮かんできそうですね。

移住先で新しい仕事を探す

移住先で新たな仕事を探すことももちろんできます。企業に勤めている場合、住みたい土地に支社がある場合は希望することができますが、一般的には地元企業への転職が普通です。代表的な方法としては「地方自治体の就業支援制度」、「求人情報サイトへの登録」、「地域おこし協力隊」などがあります。

ひとつめは「地方自治体の就業支援制度」です。Uターン者やIターン者向けの就業支援を積極的に行っている地方自治体も多く、制度の内容もさまざまです。Webサイトでの情報収集もできますが、東京や大阪などの首都圏では体験イベントや地元企業の説明会も随時開催されているので、情報収集するとよいでしょう。

ふたつめは「求人情報サイトへの登録」です。SMOUTはもちろんUターン・Iターン者専門の求人、転職サイトでもたくさんの求人を紹介しています。またこうした転職サイトでは、その土地の状況や仕事内容をまとめた取材記事なども多いので、下調べの参考資料にもなります。

最後の地域おこし協力隊は「とにかく地域で何かをしたい!」という熱意がある人に。深く地域に入りこみ、その土地に触れる中で仕事を探していくことができます。誰にでもできる内容とは言いにくいため、ゆくゆくはその土地に住みたいという思いがある人にお薦めです。

地方ならではのハードルと兼業思考

今回は仕事と移住の関係を考えてみましたが、移住は元々ハードルが高いものです。仕事が見つかったからといってすぐ移住、という流れはなかなか難しいでしょう。家族がいる場合ならなおさら、住環境や教育面などの問題、また親戚縁者との関係など、さまざまな問題が出るはずです。だからこそ、移住する理由をしっかり見極めて理解を得ながら、その土地で自分はどんな暮らしが送れるか、またどんな職業に着けばそれが実現するのかを見極めることが必要。人によっては、都市部の利便性や仕事の経験と環境を手放す必要がない、たとえば週末だけ地方を訪れるような暮らし方が向いている場合もあるからです。

また前述したように、地方では都市部ほどは賃金が高くない場合がほとんどです。「移住先に仕事を持っていく」で説明したように、うまく仕事を積み重ねられればベストですが、地元での完全な転職では移住前より賃金・収入が下がる場合もあります。稼げる仕事で最低限の収入を担保した上で、興味のある仕事を兼業するなど、複数を仕事を持つ働き方を視野に入れるとよいでしょう。

たとえば、現在久米島の地域おこし協力隊「島ぐらしコンシェルジュ」の一員として活躍する石坂達さんもその一人です。現在の地域おこし協力隊の活動に平行し、以前従事していたITやライティングの知識を活かした副業に従事。さらに任期終了後を見据えて起業準備を進めるなど、平均賃金が一般的な希望賃金水準以下の地域ながら、独自のスタンスで充実した「地方での働き方」を実践されています。

働き方は人によってさまざまですが、兼業するうちにその仕事の楽しさや相性のよさが見えてくる場合も、自分なりの課題や興味対象に出会う可能性も大いにあります。

最初は副業だった仕事が、いつの間にかかけがえのない生業になっていることも。地方移住の面白さは、未知の結果や偶然が潜んでいることにあります。新しい価値観で動くミレニアル世代に導かれるように、社会の常識もどんどん変化してきています。決まった生活では気づけない発見や新たな人生に出会う「移住」に自分をかけてみるのも、これからの一つの選択なのかもしれません。

文 木村早苗

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