Q.
移住を考えているんですが、地域のコミュニティにどう入っていったらいいのかわかりません。“自治会に入らないとゴミも出せない”などと聞いて不安になってます。地域のコミュニティへの入り方を教えてください!
A.
こんにちは。SMOUT移住研究所 編集長の増村江利子です。
最初に言ってしまうと、地域コミュニティへの入り方って、そんなに難しいことではないと思うんですよ。乱暴なたとえかもしれませんが、ちょっと時間を巻き戻して小学校を転校することになったとして。転校先で、どうやって友だちをつくったらいいですか? というのとおおよそ同じことなんじゃないかと。でも、大人には大人の事情……というか、地域には地域の事情があるのも事実です。今回は、そうした事情を少しひもといてみることにしましょう。
こんなにある、地域の行事
私が暮らす長野県諏訪郡富士見町は、人口15,000ほどの高原都市ですが、いくつかの行政区に分かれていて、その行政区ごとに行事や公民館があります。まずは、年間の行事をざっと挙げてみましょう。(行事の後ろに *印が付いているのは、子ども会の行事です)
1月 どんど焼き
3月 町民インディアカ大会
6年生を送る会・新1年生を迎える会 *
4月 クリーンデー開始(10月までの第一日曜日)
春の例大祭
桜祭り
小中合同地区子ども会 *
公民館清掃 *
6月 区有林管理総出払い
公民館ニュースポーツ大会
総出払い
7月 区民運動会
地区懇談会 *
マス釣り大会 *
ラジオ体操 *
8月 盆踊り練習 *
提灯準備
盆踊り
花火大会、肝試し *
提灯片付け
球技大会
9月 町防災・避難訓練
区民祭準備・練習 *
10月 秋の例大祭
秋祭り(区民祭)
区民旅行
総出払い
お楽しみ会 *
11月 選挙総会
公民館清掃・落ち葉掃き *
公民館映画上映会 *
12月 どんど焼き準備
「出払い」とは、森林の草刈り、水路の清掃といった作業のことです。この一覧だけでも、地域で暮らすってどういうことかが垣間見れそうですね。こんなに多いの?と思われたかもしれません。実際にはもっと多いですよ。他にまちのお祭りやイベントがありますし、お子さんがいれば、学校や保育園行事に加え、PTA活動などもありますから。
加えて、長野県諏訪地方には、7年ごとに御柱祭があります。御柱祭がある年は、秋の区民祭が御柱祭に代わります。神事に全町民が参加するという日本三大奇祭だそうですが、これがまた、歌や踊りなどの練習が週に何日も入ります。
そして、行事ひとつとっても、たとえば町民インディアカ大会では、事前練習が3回ほどあります。大会後には、公民館で慰労会という名の飲み会も。区民祭では、2ヶ月前くらいから週2日ほど、演芸会の練習のために集まります。本番前は週3回とか。自分の練習もあるし、子どもの練習もあります。そしてもちろん、終われば慰労会です。慰労じゃなくても、2ヶ月に一度は女性有志だけの飲み会があります。理由なんかいらないんです。招集がかかれば、みんな集まります。
ここで言いたいことは、まちの行事に参加しているうちに、自然とそのまちの、コミュニティの一員になるということです。ごくまれに、地域の行事にまったく参加しない人もいます。ほとんど参加するけど、体を動かすのが苦手だからスポーツ大会は参加しないという人も。でも、お子さんがいると、地区の子ども会で呼ばれますから、地域の行事に参加しないわけにいかなくなってくる、というのが地域なんです。
区民になるか、準区民になるか。キーマンは区長と伍長
他の地域ではどうかわかりませんが、私が暮らしているまちでは、「区民」「準区民」という区別があります。区民は正区民とも言うそうですが、これは、まちへの関わり方の違いを表す区分で、自分で選ぶことができます。ちょっと重たい言い方をすると、その地区にずっと住む人、その地区とともに生きる人が区民。借家暮らしで、いつかは地域を出るかもしれなかったり、リゾート地に暮らしていてまちの行事に参加しない人は準区民。おおよそ、そんな感じでしょうか。地区の回覧板が回ってくるのは区民だけです。お祭りや飲み会のお誘いは、そうした区分がゆるくなってきている感じもしますが、区民のほうが、準区民よりもやや高い区費を納めていて、場合によっては財産区有林の権利が発生したりする地区もあるようです。
移住の相談窓口は行政になりますが、実際に暮らすのは行政区です。もし移住を検討されている、もうすぐ移住するという方は、その地区の、その年の区長さんに、まずご挨拶に行きましょう。そして、まちへの関わりかたを相談してみてください。
次に、伍長さんにご挨拶に行きましょう。行政区はさらに10から20ほどの班に分かれていて、この班ごとにまちの清掃活動をしたりしますが、私が暮らす富士見町では、その班の長を伍長さんと呼びます。伍長さんには、その班ごとの行事や慣習を聞きましょう。実際に私の場合は、引っ越したら、班の全世帯(7軒ほど)にご挨拶としてタオルなどを配るという慣習がありました。お隣りさんには用意をしていましたが、全世帯だとは思っていなくて、聞いておいてよかったと思いました。縁起のいい話ではありませんが、班のどなたかが亡くなった場合は、班の各家庭がすぐに集まります。葬儀までの予定を組んで、みんなで葬儀場の受付などをします。そうした関係性はすごくあたたかくて、地域で生きるってこういうことなのかと、ちょっと感動したくらいです。
そうそう、冒頭に、ゴミ出しについての不安がありましたね。区民や準区民は、行政区内の定められたゴミ捨て場にゴミを出すことができますので、安心してくださいね。逆に、区費を納めていないとゴミを出しにくいと思います。区民でも準区民でもなく、地域の行事に参加していない人がゴミを出しに行ったと仮定すると、それはもう不審者です。すぐに区長さんに報告が入るだろうと思います。
同世代は、雪だるま式につながる
さて、ここまでは実際の暮らしの話。もう少し広く、同じまちの同世代の人とつながれるの? という面においてはどうでしょうか。
自分からまちに出る、という条件はあるのですが、ひとりつながると、もうそこからは雪だるま式なんですよね。それは、遊んだり飲んだりする場所がそんなにないことが背景にある気もするのですが、誰かの家に遊びに行くと、別の誰かがいる。基本、1品持ち寄りの家飲みが多いんです。また誘われてどこかに行くと、とんでもない人数が遊びにきていたりする。そんな感じでしょうか。
同じまちに住んでいることで、仲間意識のようなものがあるのも、都心暮らしの頃にはなかった感覚です。友人というより仲間というか。だから、ひとりひとりとの関係性が深いですね。中には、そうした関係性を「面倒だ」と思う人もいるかもしれません。でも私は、お祭りやまちのことが自分ごとになったほうが、みんなで助け合って生きていくほうが、楽しいと思っています。みなさんは、どんな生きかた、暮らしかたをしたいですか?
そしてもし、この地域をもう少し知りたい、という段階であれば、その地域にあるゲストハウスやシェアオフィスをのぞいてみてください。きっとそこからご縁がたくさん生まれていきますよ。
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文 増村 江利子