2020年度の「地方創生の重点施策」に向けて、おさえておくべき4つのポイント

2020年度の「地方創生の重点施策」に向けて、おさえておくべき4つのポイント

10月1日、埼玉県のさいたま新都心合同庁舎にて、内閣官房まち・ひと・しごと創生本部事務局及び内閣府地方創生推進事務局による「次期『地方版総合戦略』の策定に向けた説明会」が開催されました。第一期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」の最終年度を2019年に迎え、次の段階に向けて「地方自治体が進むべき方向性」や、「そのための取り組みを促進する支援措置」などの説明が行われました。

説明会では、前半に次期「地方版総合戦略」の策定に関する説明、後半で経済産業省が行う「地域未来投資促進法」概要、金融庁が行う「地域経済エコシステム」の推進に向けた取り組みの説明の順で進みました。本記事では、それぞれの項目から一部を抜粋してご紹介します。

第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」に向けて

写真:池田 礼

ポイント1 「まち・ひと・しごと創生総合戦略」とその背景を知る

「まち・ひと・しごと創生総合戦略」は、少子高齢化と人口減少の抑止、人口の東京一極集中の是正などを目標とした「まち・ひと・しごと創生法」をベースに、2014(平成26)年に閣議決定された戦略です。この

1. 地方にしごとをつくり、安心して働けるようにする
2.地方への新しい人の流れをつくる
3.若い世代の結婚・出産・子育ての希望をかなえる
4.時代に合った地域をつくり、安心な暮らしを守るともに、地域と地域を連携する

という“4つの基本目標”と、「情報支援・人材支援・財政支援」という“地方創生版・三本の矢”を軸に、各都道府県でも地方版総合戦略を立て、第1期として2015年からさまざまな地方創生の取り組みを行ってきました。

データで見ると、日本の総人口は2008年から減少傾向にあり、2018年時点で1億2,644万に。2014年からの4年で、就業者数は女性や高齢者の社会進出で293万人増加したものの、生産年齢人口も240万人減少しています。日本の人口の約3割を占める東京圏では、転入超過数が13.6万人という状況です。地域経済の面では、雇用や所得環境の改善、訪日外国人増や農林水産物の輸出増の一方で中小企業の人手不足が深刻化しています。

出生数については、この40年ほど減少が続き2018年は約92万人。都道府県別出生率で見ると都市部が低く、特に東京は全国でも最低です。国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口(平成29年推計)」では、現在の状況が今後も続くと2060年には人口が9,300万人にまで下がるとの予測を出しています。

この状況を改善させるべく、子ども・子育て支援新制度施行による少子化対策、一億総活躍や人づくり革命などの人口減少対策が地方創生施策と並行して進められてきました。東京への転入・転出は国内の景気動向に影響を受ける点、転入超過数の75%は進学や就職時期の15〜24歳が占める点、女性は上京すると地方に戻らない傾向が強いといった分析もあり、その対抗策として若者や女性に魅力ある学びの場や仕事づくり、女性や母親の暮らしやすいまちづくりや生活環境の整備などが行われてきたのです。

そのため、政府は第一期で「東京一極集中への是正」における目標を「東京圏への転入出を差し引きゼロにする」と定めたものの、先にもあるように達成は難しい状況です。実際に、株式会社インテージリサーチが約1万人に行ったインターネット調査によると、2019年3月時点で地方創生という言葉の認知度は80%になったものの、内容まで理解している人は約35%。人口減少の実感も強く、特に東北・中国地方では人口減少や東京一極集中の影響を問題だと感じる人も60%を超えており、第一期の取り組みを継続する必要性があると言えます。

ポイント2 民間資金の地方還元を狙う「企業版ふるさと納税」制度の拡充

そのため第2期「まち・ひと・しごと創生総合戦略」では、第1期の4つの基本目標と地方創生版三本の矢の枠組みを維持し、必要な要素の強化を図る流れとなりました。

新たに加わる視点として、

「関係人口」創出・拡大や企業・個人の地方への寄付や投資をうながす
(1)地方へのひとや資金の流れの強化

Society5.0の実現とSDGsによる地方創生をめざす
(2)新しい時代の流れの力を活かす
(3)人材を育て活かす」

地域づくりを担う地方公共団体やNPO法人と協働する
(4)民間と協働する
(5)誰もが活躍できる地域社会をつくる
(6)地域経営の視点で取り組む

など。

特に注目すべきは「(1)地方へのひとや資金の流れの強化」への取り組みです。例えば、「関係人口」の創出では、地域課題の解決や将来的な地方移住の増加を見据えた地域の「ファンづくり」、副業・兼業として地域で働く人のための「仕事づくり」のほか、地方創生交付金によるUIJターン促進が想定されています。そして「地方への企業の本社機能移転の強化」と「企業版ふるさと納税の活用促進による民間資金の地方還元」では、「地方拠点強化税制」と「企業版ふるさと納税」の制度延長と内容拡充が進められているからです。

例えば、企業版ふるさと納税は、ある事業への企業寄付に損金算入措置と法人税関連の控除が受けられる制度ですが、2018年度の活用実績は34.8億円。個人の5,127億円超に較べるとかなり小さい額に留まっています。

そこで利用に係るハードル軽減と利用促進のため、

1.税額控除の特例措置を5年間(令和6年度まで)延長する
2.税額控除割合を3割から6割に引き上げる
3.個別事業を認定する方式から、包括的な認定とし、法適合性を事後報告する方式に転換する(手続きの簡素化)
4.併用可能な国の補助金・交付金の範囲を拡大する
5.寄付時期の制限を大幅に緩和する

などの税制改正要望が行われました。

事務局からは、各地方公共団体には第一期の検討を行った上で、こうした優遇措置や改正点なども考慮して次期の地方版総合戦略の策定を随時進めてほしいとの要望がされていました。

ポイント3 地域特性を生かした付加価値創出を支援する「地域未来投資促進法」

経済産業省からは、「地域未来投資促進法」の説明が行われました。地域未来投資促進法とは、地域への経済効果が高く地域特性を活かした事業者の事業支援を行うため、2017年に施行された法律です。地域の持続的な発展や地域経済に貢献し、よい循環となる取り組みを増やすことが狙いです。

この法律に関連した様々な支援措置が設けられており、それらの適用には、まず各地方自治体が国の基本方針を元に「基本計画」を策定する必要があります。その後、事業者が、国の同意を受けた基本計画に沿って「地域経済牽引事業計画」を作成し、都道府県から承認を受けることが必要です。事業計画は、

1.地域特性の活用
2.高い付加価値の創出
3.地域の事業者に対する経済的効果の見込み

が認められる内容でなければなりません。

この施行から2019年6月までに策定された各地方自治体の基本計画は、232件。関東経済産業局管内では、9月末時点で成長ものづくり(製造業)分野や環境・スポーツ・文化・まちづくり分野などで65件が同意を受けています。また提出された地域経済牽引事業計画では、同年6月30日までに全国で製造業や卸売・小売業などで1,661件が承認を受けています。

支援措置としては、1.予算、2.税制、3.金融、4.情報、5.規制の特例措置などが挙げられます。1では地域未来投資促進事業等の補助金・委託費が措置されているほか、地域経済牽引事業に関連する地方創生推進交付金の申請事業数の特例、2では資本金1億円以上の事業者も含めた事業関連設備や建物の減税措置があり、付加価値額が伸びている企業についてはさらに減税率が高くなる措置も講じています。そのほか、3では日本政策金融公庫による低金利融資制度、5では工場立地法の緑地面積率の緩和などがあります。

また事業計画をスムーズに進めるため、大学や金融機関などが連携して支援体制を構築する「連携支援計画」もあります。こちらは2019年6月までに、栃木県の航空宇宙分野や四国全域の高機能素材関連分野など77件が承認されています。

さらに経済産業省では、地域未来牽引事業の担い手候補として地域の中核企業から「地域未来牽引企業」を選定、ブランド価値の向上やビジネス環境の整備などの支援を行っています。2017年は2,148社、2018年に1,543社が選定され、地域未来牽引企業サミットやシンポジウムなどを通じて商談や商品開発を新たに行う企業も増えています。

経済産業省では、こうした地域未来投資促進法の活用や地域未来牽引企業への支援を通じ、今後も地域経済の活性化のために努めたいと説明がありました。

ポイント4 「地域経済エコシステム」と課題解決への取り組み

金融庁からは、2018年から始まった地域課題解決支援の活動が紹介されました。地域課題のある場に入り、地方と中央、産学官金をつないで地域の人々が活躍できるよう課題の解決策を探し、実践する地域課題解決支援チームを中心に活動を進めているとのこと。

実績として、公務員と地域金融機関が地域課題を共有し解決策を検討する「ちいきん会」を元に実現した事例を紹介。東北地方における中小企業の経営課題の解決支援策として、従来は関東圏のみだった、知見ある人材を確保したい中小企業と企業OB人材のマッチング制度をWebで展開させた「新現役交流会2.0」、熊本での地元有志と地域課題を共有し議論するオフサイトミーティング「熊本ダイアログ」の仕組みが説明されました。特に後者では、地域課題を明確にしたことで改善策として熊本県内の潜在的起業希望者への支援環境の整備やイベントの開催などが企画され、現在も創業を促進する活動が行われています。各地域の取り組みのノウハウ蓄積や情報提供を行う地域課題解決支援室とともに、今後も各地域で連携しながら課題解決に取り組む予定だとの説明がありました。

第1期の地方創生の状況の振り返りと新たな改正点だけでなく、各自治体の特色を活かした第2期の活動へと繋げていく上での有益な情報が提供された説明会でした。

文 木村 早苗

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