全国の「関係人口」は、1,800万人超! 国交省「地域との関わりについてのアンケート」調査結果から見えること

全国の「関係人口」は、1,800万人超! 国交省「地域との関わりについてのアンケート」調査結果から見えること

移住でも観光でもなく、生活圏や通勤圏以外の特定の地域と、継続的で多様な関わりを持つ「関係人口」。そうした関係人口について、実際にどんな人たちがどのように地域と関わりを持つのか、実態はあまり把握されてこなかったように思います。

そうしたなか、国土交通省は令和2年9月に「地域との関わりについてのアンケート」を実施(※)。今回は、その内容を紹介します。

(※)三大都市圏に居住する約3万人に対してイン ターネットアンケートを実施。18歳から99歳の男女、28,466人が有効回答。調査対象地域の18歳以上の人口(約4,678万人)に基づき、男女比率及び年齢構成を踏ま えて拡大推計を実施した。

01. 三大都市圏における関係人口の存在

01(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)(三大都市圏の関係人口、人数ベース)回答者総数:28,466人

まず、三大都市圏居住者の日常生活圏、通勤圏以外の地域との関わりの状況を聞いたところ、18歳以上の居住者(約4,678万人)のうち、約2割強(約1,080万人)が関係人口として、日常生活圏、通勤圏等以外の特定の地域を訪問していることがわかりました。

関係人口(訪問系)とは、日常生活圏、通勤圏、業務上の支社・営業所訪問等以外に定期的・継続的に関わりがある地域があり、かつ、訪問している人のことを指します。(地縁・血縁先の訪問 (帰省を含む)を主な目的としている人を除く)

また、関係人口(訪問系)は、地域における過ごし方に応じて4つのタイプに分類されています。

・直接寄与型:産業の創出、地域づくりプロジェクトの企画・運営、 協力、地域づくり・ボランティア活動への参加等

・就労型:地域においてテレワーク及び副業の実施、地元企業等における労働、農林水産業への従事

・参加・交流型:地域の人との交流やイベント、体験プログラム等に 参加

・趣味・消費型:地縁・血縁先以外で、地域での飲食や趣味活動 等を実施(他の活動をしていない)

ここでは「趣味・消費型」の割合が一番大きく、この割合がそのまま、地域への関わりの深さに比例するものであるといえそうです。

02. 「関係人口」は、どの程度認知されているか

02(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)(三大都市圏の関係人口、人数ベース)回答者総数:28,466人

次に、「関係人口」はどの程度認知されているか、三大都市圏居住者の関係人口の認知度を聞いてみたところ、「特に聞いたこともないし、よくわからない」が73.2%という結果から、一定程度の関係人口が存在しているが、言葉の認知度は非常に低い状況であることがわかりました。

役場のなかで、あるいはまちなかで話す場合には別として、まちからの仕掛けとして、例えば生活者に向けて「関係人口づくりのための〜」といったイベントタイトルをつけたりしていないか、十分に吟味をする必要がありそうです。

03. 関係人口ではない人は、どの程度関係人口に関心があるか

03_103_2(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)(三大都市圏の関係人口、人数ベース)回答者総数:17,405人

特定の地域と関わりのない人に対して、居住地等以外への関わりの希望を確認したところ、「訪問・滞在して関わる地域があると良い」と回答した人は、約16%という結果に。「訪問・滞在はせずに応援できる地域があると良い」と回答した約13%と合わせると、居住地等以外の地域と何らかの関係を求めている人が約3割存在していることになります。

一方で、「特に関わりを持ちたいと思わない」と回答した人が約7割存在していました。関わること自体に面倒さを感じるのか「特に理由はない」と答えた人が一番多く、経済的、時間的な負担が大きいこともその理由となっているようです。

04. 関係人口は、地域でどう過ごしているのか

04(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)(三大都市圏の関係人口、人数ベース)回答者総数:5,820人

関係人口(訪問系)の関わり先での過ごし方を聞いてみたところ、「地域ならではの飲食や買い物(地場産品の購入等)」や「自分の趣味や地域の環境を楽しむ活動」と答えた人の割合が多く、地域の人との交流や人脈づくり、祭りや地域体験プログラムへの参加を行っている人も、ある程度の割合で存在することがわかりました。

たとえば、地域の飲食店や道の駅、地場産品を置いているショップのオーナーと連携をとっておき、そうした場所を地域と関係人口をつなぐ「関係案内所」として機能するような仕掛けが必要になりそうです。

05. 直接寄与型は、地域でどう過ごしているのか

05(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)(三大都市圏の関係人口、人数ベース)回答者総数:749人

地域で産業の創出、地域づくりプロジェクトの企画・運営、 協力、地域づくり・ボランティア活動への参加するなど、直接的に地域に寄与する「直接寄与型」の人たちがどのように地域で過ごすのかを聞いたところ、「地域のボランティアや共助活動への参加」が一番多く、「地域のまちおこしにつながるようなプロジェクトの企画・運営、または協力・支援など」への参加も比較的高いことがわかりました。

直接寄与型の人は、地域の人との交流やコミュニケーション、人脈づくりを意識しているといえそうです。

副業(複業)や兼業といった仕事を地域で探したい、稼ぐ手段を地域に求めているというよりも、地域づくりに関わりたい、地域のまちおこしに寄与したいという地域への貢献を求めている様子がうかがえます。

06. 地域と関わりを続けるために必要な要素

08(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)(三大都市圏の関係人口、人数ベース)回答者総数:656人

直接寄与型が考える、地域との関わりを継続した理由については、「人との出会いやつながりがあることや共感を得られること」が一番多く、次に「楽しい、リフレッシュできる」「生きがいを感じる、自分らしさや成長などを実現できる」といった回答も高かったことから、自己欲求を満たすことが目的となっている割合が高いことがわかります。

このことから、「関係人口づくり」にあたっては、人口減少対策や移住施策のひとつとして捉えられがちではありますが、関係のある地域と関わりを続けるために必要な要素として、地域に足を運ぶことが自分らしさや成長の機会となるような、その人がその人らしい生き方を送れるか、そのための人や地域との出会いをどうサポートできるかを考える必要があるように感じました。

07. 地域と関わりを深めるために必要な要素

09(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)(三大都市圏の関係人口、人数ベース)回答者総数:749人

それでは、地域との関わりを深めるために必要な要素として、何が考えられるのでしょうか。地域との関係性を深めたい人が多いと思われる「直接寄与型」に必要な要素を聞いたところ、「時間的な余裕の確保」に次いで、同じくらいの割合で「地域の人とつながりを持てる場の確保」が挙げられました

また、「家族や同行者の理解、価値観の合う仲間の存在」や「自分の能力・知識・経験などを活かせる機会の存在」といった回答も高い一方で、「地域での活動に伴う収入の確保」「会社など所属組織の理解、テレワークや副業を認めるなどの制度化」と回答する割合は低く、あくまで基盤は現在の場所にあることを示しているように感じました。

08. 関係人口が求める地域との多様な関わり

10(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)(三大都市圏の関係人口、人数ベース)回答者総数:5,820人

関係人口(訪問系)の大分類ごとの関わりの深化の方向性について調べたところ、「直接寄与型」は、地域の人とのコミュニケーションを深めたり、多くの人とのつながりを持つこと、地域のためになることにチャレンジしたいなど、関わりの深化を求める傾向が強いことがわかりました。

また、「趣味・消費型」は、いま以上の関係性は求めていない人が5割を超えるなど、関わりの深化をあまり求めていないこと、それに比べると「参加・交流型」は、地域との関わりを深めたいという傾向が若干強いことから、地域との関わりを深めるきっかけを提供することが重要になりそうです。

ここでは「概ね5年以内の移住や就労などを考えたい」と答えた人は、「直接寄与型」の人でも10%に満たないという結果ではありますが、地域に足を運んでいるうちに、人とのつながりから自然と移住や就労のきっかけが生まれたりすることも考えられそうです。

09. 地域を移住先としてどのように考えているか

11(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)(三大都市圏の関係人口、人数ベース)回答者総数:5,820人

関係人口全体に対して、関係人口となっている地域について、移住先としてどのように考えているかを聞いたところ、「移住したい地域である」または「どちらかといえば移住したい地域である」と回答した人は、全体の約5割程度という結果となりました。

なかでも直接寄与型は、移住先として捉えている傾向が若干強いことがわかりました。

10. 関係人口の地域における活動ポテンシャル

12(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和元年9月実施)(三大都市圏の関係人口、人数ベース)回答者総数:5,820人

関係人口の類型別の「地域での過ごし方」と「訪問頻度」をマトリクスで表現してみたところ、ボリュームゾーンは、現地消費・趣味活動の年に1回程度及び年に数回の訪問であることがわかりました。

一方で、月に数回以上訪問し、地域での副業(地元企業、農林水産業への従事など)やボランティア、共助活動等を行っている人も一定程度存在しているようです。

11. 関係人口の人数と三大都市圏からの転入超過回数

11-1(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和2年9月実施)、訪問地域数ベース 総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告(H24~H31)」

関係人口の人数と、三大都市圏からの転入超過回数の関係をみたところ、人口1万人当たりの関係人口が多い市区町村は、三大都市圏からの転入超過回数も多いことがわかりました。

関係人口の来訪が多い地域は三大都市圏からの移住者が多いことから、そのような地域では、外からの人を受け入れる環境が整っていると考えられます。

これは言い換えると、関係人口の受け入れが上手な地域は、移住者にとって移住しやすい、入りやすい地域であるともいえそうです。

12. 関係人口の人数と三大都市圏からの転入超過回数が多い地域

12-1(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和2年9月実施)、訪問地域数ベース 総務省統計局「住民基本台帳人口移動報告(H24~H31)」

人口1万人当たりの関係人口の人数と、転入超過回数が多い市町村をみたところ、どういった地域が関係人口を多く持つ地域なのかが見えてきました。転入超過回数は表の右側、緑色に向かって多く、具体的な地域名は参考になりそうです。

13. 関わり先別・関係人口大分類別の移住希望

13(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和2年9月実施)、首都圏都市部→その他地域、訪問地域数ベース

首都圏都市部からその他地域に関わりを持つ関係人口のうち「直接寄与型」は、移住希望が他の関係人口の大分類(就労型、参加・交流型、趣味・消費型)と比較して高く、関わり先の地域が「農山漁村部」、「市街地部(市街地内農林地等)」、「市街地部(住宅地)」の人ほど、その傾向が強いことがわかりました。

また、「就労型(テレワーク)」において、関わり先の地域が「市街地部 (市街地内農林地等)」の人も、移住希望の強さが見られました。

14. 移住したいと思う理由(関係人口大分類別)

14(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和2年9月実施)、首都圏都市部→その他地域、訪問地域数ベース

首都圏都市部からその他地域に関わりを持つ関係人口に対し、移住したい理由を大分類別に聞いてみたところ、分類にかかわらず「住環境の魅力」や「自然環境の豊かさ」が主な理由となっていることがわかりました。

また、生活費の安さや親族の近くに住むことに加え、「地域コミュニティやつながりに魅力を感じる」「魅力的な人がいる」といった点を挙げている人もおり、地域ごとにどのような魅力のあるコミュニティを形成できるかが問われそうです。

15. 新型コロナウイルスが関係人口に及ぼした影響

15(出典)「地域との関わりについてのアンケート」(国土交通省、令和2年9月実施)(関係人口(訪問系)、訪問地域数ベース)

新型コロナウイルスが関係人口に及ぼした影響について、地域との関わり方にどう変化があったかを聞いたところ、三大都市圏からその他地域に関わりを持つ関係人口は「地域との関わり方に変化はない」、または「地域への訪問の頻度が減少した」と回答する人の割合が大きいことがわかりました。ただし、「訪問を自粛又は休止したが、非訪問系の関わりに移行」した人の割合が大きく、継続的に地域を応援しようとする傾向がみられます。

また、その他地域から三大都市圏に関わりを持つ関係人口は「地域への訪問の頻度が減少した」と回答する人の割合が最も大きく、東京圏などにおける感染者の増加が要因として考えられそうです。

 

いかがでしたでしょうか。

今回の「地域との関わりについてのアンケート」調査結果から、三大都市圏の関係人口は1,000万人超であること(推計値)、地域と多様な関わりを持っていることが見えてきました。

特に、関係人口のなかでも「直接寄与型」は移住への意向もあることから、直接寄与型の地域での過ごし方を読み解き、地域の人との交流やコミニュケーションが図れるプロジェクトや、地域のボランティア活動をどのように用意ができるか、そのアイデアが問われそうです。

地域に足を運ぶことで、どのように人との出会いやつながりが生まれるのか、どのようにその人の成長の機会があるのか。

地域をどう見せるかではなく、どのように足を運んでくれた人と向き合うか、ぜひ地域の中のみなさんで話してみてください。

文 SMOUT移住研究所 編集部