地域で起こす「“脱東京”起業」は地域にエコシステムをつくれるか。シェアサミット2021で論じられた地域の未来

地域で起こす「“脱東京”起業」は地域にエコシステムをつくれるか。シェアサミット2021で論じられた地域の未来

10月5日に開催された「SHARE SUMMIT 2021」では、「企業、個人、政府、自治体、NPO、教育機関が手を取りあい、持続可能な共生社会『Co-Society』の実現に向けた具体的な行動『Sustainable Action』を起こし、新たな社会を創造していく」というテーマのもと、「シェア」を起点に、地域社会やSDGsなど様々な分野で議論がかわされました。

その中の1セッションとして開かれたのが「“脱東京”起業~イノベーションの集積地としての多様性~」。東京一極集中を脱却し、東京以外で起業することの可能性を探りました。

登壇者は、モデレーターで大阪でベンチャー支援事業を行うCon代表の権基哲さん、大阪で起業したakippa株式会社代表取締役社長CEOの金谷元気さん、広島で起業したラクサス・テクノロジーズ株式会社代表取締役会長 CEOの児玉昇司さん、京都で起業した株式会社Casie代表取締役CEOの藤本翔さん、名古屋で起業したスタジオアンビルト株式会社代表取締役の森下敬司さんです。

まずはパネラーの自己紹介からスタートです。

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金谷さん「2009年に設立して、2014年から駐車場シェアのサービスを手掛けています。契約のない月極駐車場や使っていない個人宅の駐車場を15分単位で利用できるアプリを使ったサービスです。創業時から一貫してずっと大阪で行ってまして、東京の拠点は営業と広報くらいです。」

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児玉さん「2006年に広島で創業して、毎月定額でラグジュアリーバッグの鞄が使い放題になるサービスを手掛けています。2015年にStartup Dayの中四国版でグランプリを取ることができまして、それで全国大会に行き、今は日本とアメリカでサービスを展開しています。」

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藤本さん「2017年に、平面の絵画作品をサブスクリプションで日本全国に届けるサービスで創業しました。拠点はずっと京都で、本社兼倉庫に作品の現物を預けていただいて、それをユーザーの手元に届けてアートのある暮らしを送ってもらうことを続けています。」

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森下さん「2017年に名古屋発のスタートアップとして、名古屋駅から近いなごのキャンパスというインキュベーション施設に構えて、madree(マドリー)という間取りをプロの建築家の方にスマートフォント1つで依頼できるサービスをやっています。」

地方で起業するメリットとは?

それぞれが東京以外に拠点をおいているわけですが、地方に拠点を置くことのメリットはどのようなことなのでしょうか。

児玉さん「一番のメリットは地方では目立てることで、ビジネスコンテストでも東京のすごい人たちと戦わなくていいので、全国大会まで行けるかもしれないということもあります。あとは、家賃が安いですよね。」

広島でいうと、今の県知事が起業経験者で、スタートアップに非常に理解がある方なんです。それで、スタートアップ向けの施設をつくったり、他の県から本社を移したり。支店を広島県の中につくると最大2億円の支援金が出る制度ができたりしています。そういった箱や制度ができたのはいい点ですね。

藤本さん「京都は独自のカルチャーがあって、地元の金融機関が圧倒的にシェアを獲得しているので、力を持ってる金融機関が超地域密着型で、特に芸術や文化に関するベンチャーへサポートは手厚すぎるくらい手厚いんです。だから、僕らはすごい良い恩恵を受けてると思います。

あと、嬉しいのが、街中で「社長、新聞見たで、頑張りや」とか言ってもらえて、そういうのって自分が気持ち落ちてたときとかタイミングよく言われるとすごくよくて。小さなまちだからこそのよさですね。」

金谷さん「大阪にいるメリットは、家賃が安いとか、採用しやすいとかですね。個人的に、大阪が好きというのが大阪にいる一番の理由です。」

森下さん「名古屋だと東京とスケール感も人の密度も違うので、コミュニティに入りやすいというのはあると思います。人の距離感が近いので、だいたいの人に誰かワンクッションを入れれば繋がる。それは地方ならではの、スタートアップをやるときのメリットになる部分だと思いますね。」

権さん「地方だからこそ、密度の濃いコミュニティが展開されていて、創業するにあたって人とのつながりができやすかったり、目立てるところがあるというところですね。」

地方のデメリットはなくなってきている

逆に、地方であることのデメリットがあるとしたら、どのようなことなのでしょうか。そして、それは変化してきているのでしょうか。

児玉さん「デメリットは資金調達で、大きな金額になると東京でやらなきゃ、というのはあるかもしれませんね。でも今は、前みたいに直接会って、飲んで、といったことがなくなってきていて、一度も会わないままで何十億調達したという話も出るくらいなので、そうしたデメリットもなくなってきてるのかなと思います。起業経験者が少ないので、支援する側にも起業家が増えてくるといいのかもしれません。」

金谷さん「確かに、創業した時は、商工会に行って会社のつくり方を教えてもらって、日本政策投資銀行で創業資金を借りてという感じでしたが、2014年頃から、大阪でもイノベーションハブができたり、アクセラレーションプログラムを始まって、そこに投資家の人が集まってきて、スタートアップもエクイティで調達できるような変化は生まれてきてますね。」

藤本さん「僕らの場合は、2017年の創業時の段階で、大阪や京都の小さなビジネスコンテストにも審査員として東京のVCの代表の方々が顔を揃えてるような状態で、当時は銀行の融資と自己資金だけでやっていく気持ちだったんですが、そういうところで出会ったVCやエンジェル投資家に引き上げてもらって、事業支援者が一気に広がったという流れはあります。」

森下さん「僕らも創業は2017年ですが、名古屋ではまだまだスタートアップ企業は少なくて、資金調達のために東京のエンジェル投資家の方にアポをとって夜行バスで東京まで行くという感じでした。

でも、ここ数年でだいぶ状況が変わってきて、名古屋市が東京のVCと名古屋のスタートアップのマッチングイベントを開いたりして、一気に20社くらいのVCと出会う機会があったり、名古屋はすごく今盛り上がってる感じですね。実際、愛知県はいま資金調達ランキングだと、東京神奈川についで3番目なんです。」

金谷さん「デメリットとして、東京とはコミュニティの中で出てくる話が全く違うというのがあります。東京にある情報は書籍には乗っていないような深い情報で、それを得るには東京のコミュニティに入っていかないといけない。」

森下さん「確かに、今は東京にも行きづらくて、東京の情報をキャッチするのは結構苦労してますね。」

権さん「いかに成功事例を地域の中でつくっていくかが大事になってくるんですね。それが地域での資金調達につながると。ただ、東京でコミュニティに入って情報を収集することは大事だということですね。」

地方にエコシステムをつくる

地方には東京と違うメリット、デメリットがある中で、それぞれの地域でエコシステムをつくり、コミュニティを深めていくことが重要です。では、そのエコシステムをつくるために必要なこととは何なのでしょうか。

藤本さん「京都には資金がたくさんある非上場のオーナー企業がけっこうあるんですよ。そういう会社がベンチャー支援に回ってくれるような環境が整うと、もともと体力や文化的なところは備わっているので、一気にベンチャーにとってやりやすい環境になってくるかなと思います。」

森下さん「名古屋もあと5年ぐらいでエコシステムが形をして出来上がってくると思っています。同じくらいのタイミングでリニアも完成して、東京と40分くらいで行き来できるようになるので、名古屋に住んで東京には週2回ぐらい行く起業の形もできるのかなと。エコシステムをつくって、東京と一体になりなから成長できるような環境ができるとすごくいいんじゃないかなと思ってます。」

児玉さん「脱東京とはいっても、僕は移動って未来予測を政策にしてくれると思っているので、地方だけにいるのではなく、地方と東京を行ったり来たりしながら、それを楽しみながらインプット増やしてけばいいんじゃないかと思います。」

金谷さん「多様性というところを考えても、僕は好きなまちでいつでも好きな友達に会える地元で経営をしていきたいですが、しっかりとグロスして世界的な企業になっていくことで、東京に行けなくても地元でできるというムーブメントをつくりたいなと思っています。東京がいいとか地方がいいとかではなく、多様性を示していくことが大事なのではないでしょうか。」

A⑤_脱東京_起業

「脱東京」は東京の否定ではなく、多様性を生み出すこと。

地域それぞれにエコシステムができて、そのなかでその地域なりの起業が起きてくることで、東京も含めた日本全体のエコシステムが好循環する可能性が広がりそうです。

これはある意味、現在東京に一極集中している資本がシェアされることで全体が豊かになっていく一つの形なのかもしれません。

文 石村研二

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