地域と地域が、つながる・広がる。SMOUT「どすこい!地域部屋」に見る、地域間コミュニティのつくりかた

地域と地域が、つながる・広がる。SMOUT「どすこい!地域部屋」に見る、地域間コミュニティのつくりかた

2020年12月、「どすこい!地域部屋 地方巡業オンライン」が開催されました。「どすこい!地域部屋」とは、2020年5月にできた、SMOUTの地域ユーザー向けコミュニティのこと。日々slackコミュニティで会話を重ねていますが、移住や関係人口に携わっている地域の担当者が集まる合宿を開催しよう!ということで、地域を順番に巡って開催予定であることから、地方巡業オンラインと名付けられました。

この記事では、「どすこい!地域部屋 地方巡業オンライン」の開催を通じて見えた、地域間コミュニティのつくりかたについて紹介します。

「どすこい!地域部屋」って?

名称を聞いて、どすこい?なぜ相撲?と思われる人もいるかもしれませんが、順に説明していきましょう。

地域ユーザー向けのコミュニティ「どすこい!地域部屋」は、地域ユーザーなら無料会員でも入れるオンラインコミュニティです。地域ユーザーからの「他の地域ではどんなプロジェクトを企画実施しているのか知りたい」「気になってたあの地域のプロジェクト、結果はどうだったのか知りたい」「地域の担当者同士で情報交換してみたい」という思いに応えるべく生まれました。

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コミュニティーの目的は3つ。

1、移住、関係人口施策に関わっているみなさんの情報共有&学び合いの場になること
2、SMOUTの利用方法を実際に利用しているみなさんとともにブラッシュアップし、より利用しやすいサービスにしていくこと
3、全国の横のつながりをつくり、一緒に盛り上げていく仲間を見つける場になること

です。

もともとは移住スカウトサービス「SMOUT」の「地域ユーザー会」として始まりましたが、コミュニティのメンバーが地域ユーザーだけでなく、一般ユーザーも参加するようになってきたことから新たに名称をつけることに。地域ユーザーからアイデアを募り、SMOUTは相撲(すもう)と響きが似ていること、そして同じ土俵に立っている全国の移住担当者どうしが争うのではなく、一緒に稽古しながら切磋琢磨するイメージを想起しやすいことから、「SMOUT(スマウト)」と「相撲」を掛けた「どすこい!地域部屋」が採用されました。(発案者は、千葉可奈子さん(宮城県気仙沼市)です!)

地域部屋のコンセプトは、「地域ユーザーの、地域ユーザーによる、地域ユーザーのための地域部屋」。slackコミュニティでは日々、「こんな事業を計画中なんです」といった相談や、「こんな移住相談を受けたとき、どうしてますか?」といったプチお悩み相談などがされています。

地域ユーザーとサポーターが積極的に運営にも参加していますが、この運営グループは相撲にちなんで「タニマチの会」と呼ばれ、月に1度オンラインで地域部屋やオンラインイベントに関する会議をしています。

そして「どすこい!地域部屋」では地域ユーザーが「あだ名」で呼び合い、地域を超えてフランクかつフラットなやり取りがされているのが特徴で、定期的に以下のようなオンラインイベントが行われています。

・月例イベント「◯月場所」
毎月最終火曜にオンラインで行われる、地域ユーザー会議。「タニマチの会」が中心となり、「移住担当者の困りごと、共有しませんか?」といったお題で、ショートプレゼンとディスカッションが行われます。参加人数は、毎回20名程度で、他の地域の課題や困りごとから、リアルに地域のことを考える勉強会です。

・不定期イベント「ちゃんこ会」
地域ユーザーが活動紹介をしたり、SMOUTスタッフから人気のプロジェクトのポイント、「興味ある」をクリックしてもらうためのプロジェクトのつくりかたなどが紹介されている、不定期なイベントです。地域部屋メンバーは、誰でもちゃんこ会の発案者になることができます。

「どすこい!地域部屋」の合宿、「地方巡業オンライン」

そして、この「どすこい!地域部屋」に集う、移住や関係人口に携わっている地域の担当者が集まる合宿をしようと開催されたのが「どすこい!地域部屋 地方巡業オンライン」です。

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ファシリテーターをつとめた高垣陽子(株式会社カヤック)は長野県小諸市役所から参加。写真最上段の左。

この合宿に参加した地域名をざっとあげると、北から北海道喜茂別町、岩手県盛岡市、岩手県南三陸町、宮城県気仙沼市、神奈川県鎌倉市、長野県安曇野市、長野県小諸市、長野県諏訪郡、長野県伊那市、静岡県熱海市、兵庫県豊岡市、徳島県三好市、香川県高松市、宮崎県椎葉村……(このほかに、参加できないけれど、収録動画で学びたいという地域の方も多数)。日本の北から南まで、さまざまな地域からの参加者が集いました。オンラインでの開催ではありますが、メイン会場は長野県小諸市です。

株式会社カヤックのカスタマーサクセス高垣陽子から「最新の移住者動向について」の話があったほか、静岡県熱海市のライフスタイルデザイナー、中屋香織さんからは「移住相談者が求めていることを引き出す方法」、長野県安曇野市の信州暮らしパートナー、山下美鈴さんからは「信州暮らしパートナーとしての取り組み」、そして株式会社カヤックのカスタマーサクセスの加藤朝彦(北海道喜茂別町在住)による、地域の移住ビジョンをつくるためのワークショップが行われました。

ここでは「最新の移住者動向について」、その内容を一部抜粋して紹介しましょう。

高垣「2020年7月末にとったSMOUT利用者へのアンケート結果に、ダイレクトにコロナの影響が出ています。この機会に暮らし方、働き方を変えたいと思った人が34%だったのですが、ポジティブに暮らし方や働き方も含めて変えようという変化があった、というのがコロナ以降の大きな変化なのかなと。そして、SMOUT利用者は20代、30代が多かったんですが、30代、40代が増えてきている。家族層が移住検討層に入ってきたと考えられます。」

また、2020年10月以降、リモートワークに対する方針を社員に通達する企業が増えたことも影響があると話します。

高垣「企業が、地方移住に対しての福利厚生を検討し始めていますね。リモートワークになると会社への帰属性が薄くなってしまうので、人事担当者が手を打ちつつあります。そのひとつが、リモートワークに対する福利厚生。ネット環境やコーヒー代といった意味合いだと思いますが、リモートワークで月5,000円支給とか、福利厚生として家賃を全額補助、移動に伴う新幹線代を月1回全額支給にするといった企業も出始めています。新しいワークフローの確立と、その会社で働く社員のモチベーションアップのために、今後はさらに導入企業が増えそうです。」

また、リモートワークが広がることでチーム感の醸成が難しくなるため、地域を選んで合宿をおこなう動きも。合宿にふさわしい地域を人事担当者が探すことになりますが、例えばIT企業であれば、合宿で集中して開発ができる、あるいは地域の人とこんなコミュニケーションが取れるなど、仕事環境にプラスしてどんなコンテンツを用意できるかが地域側の腕の見せどころになる、といった話もありました。

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小諸チームのランチは、そばとイタリアンが融合したユニークなお店「HARADA」さんへ。小諸産白土馬鈴薯を使った「ホワイトピザ」、小諸産の黒大豆からつくられる味噌を使ったパスタ「コモローゼ」など飯テロ画像が次々と……。

ちなみにお昼の時間には、「ランチ会」と称してみんなで食べながら雑談も。そして合宿の最後におこなわれたチェックアウトでは、以下のようなコメントがありました。

・みなさんは、ライバルではなくチーム、仲間だと思っている。いろんなまちを知りたいと思った。

・まずみなさんとつながれたことが嬉しい。次はリアルでお会いしたい!

・地域の課題は地域の「中」にあるけど、解決策は地域の「外」にあるかもしれない。だから地域の課題を棚卸して、それを誰かにシェアしてみることは大切だと思う。

・移住をしたい人、迎える地域の人、双方がハッピーになれるような循環が生まれると嬉しい。

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ランチのあとは、小諸散歩。小諸チームのふたりが、駅前まで歩いてまちなかの風景を見せてくれました。写真は、小諸駅内にある電源カフェ「小諸駅のまど」。移住者がオーナーとして運営。

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小諸市役所からお届けした小諸市チームのふたり。左は小諸市市役所の大日方愛弥さん、右は株式会社カヤックの高垣陽子。

地域と地域のいいつながりは、どうしたらつくれるのか?

合宿の開催後日、運営グループ「タニマチの会」で合宿の感想や、今後の「どすこい!地域部屋」のあり方について話し合われました。ファシリテーターは株式会社カヤックのカスタマーサクセス秋吉直樹です。

この日「タニマチの会」に参加したのは、北から立花祐美子さん(北海道下川町)、千葉可奈子さん(宮城県気仙沼市)、村上健太さん(宮崎県椎葉村)の3人です。

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左上から、千葉可奈子さん(宮城県気仙沼市)、秋吉直樹、高垣陽子、2段目の左から大学院生の宮嶋雛衣、立花祐美子さん(北海道下川町)、村上健太さん(宮崎県椎葉村)、3段目の左からSMOUT移住研究所編集長の増村江利子、加藤朝彦。

千葉さん(宮城県気仙沼市)「裏路地のスナックとか、まちの雰囲気がわかったのがよかったですね。気仙沼はお試し移住の制度が整ったので、たくさんの受け入れは今難しい状況ですが、その分、来てくださった方に長く滞在してもらいたいと思っています。旅館の女将さんなど、お会いしたら気仙沼に住みたくなっちゃうような人がたくさんいるんですよ。地域部屋で、お試し滞在のスタンプラリーができたらいいですね。」

立花さん(北海道下川町)「いいですね。地域部屋のこうした話し合いの時間も、お互いに話す、お互いに助け合う関係をつくるための時間にしたいですね。一緒に移住フェアができるような関係にしたいし、なりたい。同じ目線をもつ仲間と出会う場所になっていったらいいですよね。そして地域は今、オンラインとオフラインをうまく掛け合わせる戦略を考えなくてはいけないですね。下川町では会報誌をつくるなど、アナログな動きもあります。」

高垣「足を運べない中で、地域にどう愛着を持ってもらうかを考えないと、ですね。」

村上さん(宮崎県椎葉村)「地域へ人を呼び込むのにオンラインを使うことの優位性は、もうなくなりつつありますね。とは言いつつも、そもそもオンラインは補助的なもの。本来は、リアルなつながりがあるからこその、オンラインですよね。」

オンラインで簡単につながることができる、そして誰かと会うことが特別なことになっている今だからこそ、アナログに戻る、原点回帰の思考を取り入れることがポイントになりそうです。また、「タニマチの会」の考える、「どすこい!地域部屋」の今後のありかたも聞きました。

千葉さん(宮城県気仙沼市)「私はチーム学習だと思っていて。誰かの学びを、自分の地域に当てはめて考えてみて、地域部屋もアップデートしていく。チーム学習の中でコラボレーションが生まれていくのが理想かなと。実際に、学び、気づきがたくさんある場だなと毎回思います。それがあるから参加している。お互いに与いあえる、学びあえる関係だと嬉しいですよね。越境してどんどんコラボをしていきたいです。」

秋吉「難しいコミュニティのあり方に挑戦しているなと思っているんです。誰か一人のスーパースターに頼るコミュニティではない。一方でこのメンバーだったら緩やかにいいコミュニティがつくれるんじゃないかと。みんなが助け合って、それぞれが楽しんでつくって行けたら。」

高垣「こういうコミュニティって、変容していく強さを持つことが一番大事なんじゃないかなと思います。今日話したことが3ヶ月後に変わっていてもいいし、それも面白い。」

立花さん(北海道下川町)「変容していかないと、継続は難しいですよね。関わりたい人が、関わりたいタイミングでふらりと入れる地域部屋になったらいいなと思いました。」

 

いかがでしたでしょうか。結びとして、「どすこい!地域部屋 地方巡業オンライン」で印象に残った言葉を紹介しましょう。

「もともと、移住計画の情報収集のためにブログを始めたことが発端で、移住したい人からの相談がだんだん増えて、移住相談の仕事をすることになったんです。移住相談者のお話を聞いていると、人によって越えなければいけないハードルがいくつかあるんですよね。その不安と迷いのある課題を、一緒にポジティブ考えること、応援することで解決できることもある。それと、完璧な移住ってそんなにないと思っています。移住のネガティブな面もはっきりと伝えます。いずれにしても「移住相談は人生相談」なので、相談者の気持ちに寄り添うことを大切にしたいと思っています。」(山下さん/長野県安曇野市)

「自分の暮らしを楽しむのも、仕事。人とのつながりを楽しむのも、仕事。まちに仲間や友人が増えて、好きな店が増えて、まちが魅力的になって、さらに魅力的な人が集まってくる。移住相談って、やればやるほど楽しくなるお仕事だなあと。『あなたのおかげで人生が変わった』と感謝される仕事って、そんなにないですよね。だから、笑顔の移住相談員を増やしたいんです。それが、素敵な社会の実現につながると思うから。」(中屋さん/静岡県熱海市)

移住相談を受ける地域の担当者がつながり、意見交換をすることで生まれてくるのは、「実際にお会いしたい」「その地域に行ってみたい」という気持ちでした。合宿のチェックアウトでは、「私、●●(地域名)に行きます!」という言葉が飛び交っていたのですが、移住したい人と迎える人にもこうした気持ちが生まれることが、移住の第一歩なのかもしれません。そして「移住」「関係人口」「地域活性」など、同じ目的を持つ人同士がつながることは、地域に関わりたい人と地域に関わってほしい人、双方にとってハッピーになるはずです。

「どすこい!地域部屋」の1月場所では、「2021年どうしましょうっかねぇ?会-withコロナ!今年の移住施策についてゆるりと話す会-」が行われます!(2021年1月26日(火)19時〜21時、参加費:無料)

SMOUT地域ユーザーコミュニティに入りたい!という方は、こちらのPeatixからチケット購入(無料)して、SMOUT地域ユーザーコミュニティに参加希望(どすこい地域部屋)を選択してくださいね。コミュニティスペースにご招待しますよ!

また、2021年2月2日(火)には、お近くの地域の方と仲良くなろう!ということで、「東北ランチ会」が開催されます。こちらもぜひ、参加してみてくださいね。

文 SMOUT移住研究所 編集部