2020年は、コロナ禍で多くの企業がテレワークを推奨していることから、地方に新たに拠点を持ったり、地方に移住をする動きが広がりました。こうした都市部で暮らす人の地域への関心の高まりから、SMOUTの一般登録者数も2019年末から2.6倍(2020年11月末時点)に増え、約2万人となりました。また移住・定住促進や関係人口促進を目指すサービス、メディアが次々と生まれています。
振り返ると、2018年には、地域のコミュニティを活性化する地域通貨サービスやコミュニティコイン、多拠点居住サービスなどが目立ちましたが、2019年に入ると多拠点居住サービスや地域の仕事体験サービスが続々と立ち上がりました。
今回は、2020年を振り返り、関係人口から移住・定住までをカバーするサービス・メディアをまとめた「地域系サービス・メディアカオスマップ2020年版」について、最近の動向を俯瞰しつつ、特徴的なサービスやメディアをご紹介します。
※ 2019年のカオスマップ記事はこちら!
まずは、2019年版のまとめをおさらい
さて、2020年版のお話をする前に、まずは2019年版のまとめをおさらいしましょう。
2019年のカオスマップでは、向かって左に「関係人口」、右に「移住・定住」と軸を置き、地域系サービスやメディアを分布しましたが、この2019年度版での大きなポイントは、多拠点居住サービスや、地域の仕事体験サービスが続々と立ち上がったという点でした。
“定額で全国住み放題”をうたう「ADDress(アドレス)」は2018年に登場しましたが、このサービスを筆頭に、定額で世界中住み放題の「HafH(ハフ)」、世界中に泊まり放題&プロジェクトに参加し放題の「WORKATORS(ワーケイターズ)」など、続々と新しいサービスが生まれたのが2019年でした。
空き家という社会課題に加え、所有しないという価値観を根底に、複数の拠点を渡り歩くという生活スタイルが注目されたこと、そして「WORKATORS(ワーケイターズ)」というサービス名称にも表れているように、ワーケーション(workとvacationから成る造語)という言葉も定着してきたように思います。
また、移住をしないまでも地域と関わりを持つ「関係人口」をターゲットに、地域の仕事体験ができるサービスが続々と登場したのも2019年。お手伝い×地域のマッチングプラットフォーム「おてつたび」(お手伝い+旅)や、農業に興味を持つ人に対して“その日だけの農作業”をマッチングする「シェアグリ」、旅をしながら働き、第二の故郷を見つけることを目指したアプリ「タイミートラベル」など、都市部などに拠点はありつつも、一定の期間は地域に滞在し、そこで働きながら地域との関わりを深めるといった動きが広がりました。
2020年、移住・定住や関係人口のための地域系メディア・サービス分布の特徴は?
「地域系サービス・メディアカオスマップ2020年版」における大きなポイントとして挙げられるのは、多拠点居住とワーケーションの広がりと、複業で地域の仕事をすることや地域でのリモートワーク、そして都市部に向けた地域のオンラインイベント・サロンなどのサービスが続々と立ち上がってきていることです。
そのなかでも特徴的なサービスやメディアを、少し詳しく見てみましょう。
・多拠点居住とワーケーションのサービス
「JOB HUB WORKATION」Webサイトトップページ
「Well being∞」Webサイトトップページ
2019年に急速に広がった流れを受けつつも、コロナ禍でさらに都市部から地域への動きが加速しているのが多拠点居住とワーケーションのサービスです。
都市部の企業向けに、ワーケーションを活用した人材育成・事業創造プログラム「JOB HUB WORKATION(ジョブハブ・ワーケーション)」が登場したのも、同じように企業向けのワーケーション導入・運用に関する運営ノウハウサービス「Well being∞(ウェルビーイング)」が登場したのも2020年。さらに「LivingAnywhere Commons」は2020年12月15日現在で拠点を11箇所に伸ばし、個人会員だけでなく法人会員も増えているようです。
コロナ禍で、リモートワークを推奨するだけでなくワーケーションで地域に移動するための交通費を一部支給するなど、企業の福利厚生面も変わりつつありますが、ワーケーションの予約をワンストップで完結できるようになったことで、都市部の企業が、地方に社員の時間と場所を縛らない「働く環境」をつくる動きが広まりつつあるようです。
また、多拠点居住にあたっては、子どもの学校をどうするかといった課題も出てきます。徳島県では、地方と都市のふたつの学校の行き来を容易にし、双方で教育を受けることができる「デュアルスクール」を実施しており、受入学校での就学期間も住所地の学校では欠席とならず、受入学校での出席日数として認められるなど、二地域居住や多拠点居住がしやすい政策がとられています。地域側は今後、こうした制度面でのアプローチも必要になりそうです。
・地域での複業、リモートワーク
「ともるい」トップページ
都会で働く人とふるさとの企業のプロジェクトマッチングサービス「ともるい」は、週10時間以上、スキマ時間など、地域とライトな関わり方ができることが特徴で、都市部にいながら複業として地方で働くことができるサービス。そして地域の地場産業への複業人材マッチングサービス「GOING・GOING・LOCAL」も、都市部にいながら月1回の訪問やリモートワークで地域と関わることができるサービスで、いずれも2020年に登場しました。
ひとつは、以前から地域に興味のあった人が、リモートワークで仕事ができるようになったことで、都市部の住まい、勤め先といった軸足は変えずに、自分のスキルを活かして地域に何かしらの貢献をすること、そうした仕事を通じて地域とつながりを持つことの流れ。そしてもうひとつは、副業、あるいは複業OKの企業が増えたためにパラレルキャリアとしての「複業」を持とうとする際に、「地域」が掛け算となり広まりつつある流れ。それらが大きなうねりとなって顕在化しつつあるようです。
・地域のオンラインイベント・サロン
LIFULL地方創生「地域の人とつながる LOCAL MATCH TALK」
地域のオンラインサロンや地域で活躍できる人材を育てるスクールは以前からサービスがありましたが、都市部から地域へと人を呼び込むことが難しいコロナ禍で、多くの地域がオンラインイベントやサロンを立ち上げました。
LIFULL地方創生が、オンラインイベント「地域の人とつながる LOCAL MATCH TALK」の定期開催をしたのも2020年。
地域へのあらたな入り口として、特定の場所へ相談をしに行くよりも前に、気軽に参加できるオンラインの場ができつつあることで、地域はさらに企画力や発信力を問われることになりそうです。
いかがでしたでしょうか。地域に軸足を持つことが、憧れではなく現実的な選択肢に入るようになってきた2020年。移住を考えているみなさんにも、関係人口の創出をしたい地域のみなさんにも、「地域系サービス・メディアカオスマップ2020年版」が参考になれば幸いです。
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文 SMOUT移住研究所 編集部