日本全国で5,000人以上が活躍している地域おこし協力隊。そのひとりひとりがさまざまな思いや夢を持って地域と向き合っています。
そんな地域おこし協力隊になる大きな動機の一つが「移住」です。移住を決めたタイミングで、あるいは移住先を探す中で協力隊の仕事を知り、協力隊として赴任すると同時に移住する、それは地域おこし協力隊の主旨にもかなったあり方と言えます。
最初に紹介する高橋瞳さんは、まさに移住先を探す中で陸前高田市の地域おこし協力隊に出会い、未知の土地であるにも関わらず移住を決めました。次に紹介する泉野かおりさんは、故郷岐阜県にUターンしようと仕事を探し揖斐川町の地域おこし協力隊に。そして最後に紹介する夏川戸大智さんは、「移住」そのものをテーマとし、移住を通して都会と地域をつなぐことを目指して三条市に移住コンシェルジュとして赴任しました。
それぞれの着任までの思いや着任してからのこと、ぜひ参考にしていただけたらと思います。
移住先を探す中で、地域おこし協力隊の制度を知り、地域での生活基盤をつくりながらいろいろなことにチャレンジできる仕事に魅力を感じて、ふたりで協力隊になりたいと思うようになりました。
陸前高田でも仕事は変わらず忙しいですが、週末はリンゴやゆずの収穫体験をしたり、自分のやりたいことができている実感があります。それにありのままを受け入れてくれる風土で、ご近所づきあいもさせてもらえて、お裾分け文化にほっこりするし、ありがとうって言ってもらえて嬉しかったり。
方言が強めで、ご年配の方のお話がなかなか聞き取れなかったり、車がないと生活が不便だったりはしますが、基本的には近所で何でも揃うし、背伸びせずに暮らすことの楽しさを感じています。
地域おこし協力隊に興味のある人は、地域のために何かしたいという思いがある一方で、地域に溶け込めるか不安もあると思います。私は、実際に協力隊をやってみて、仕事とプライベートのどちらかでできた人脈や経験が、もう一方に生きるいい循環が生まれてると感じられているんです。地域と関わりたい、貢献したいという人には、いい選択肢だと思いますよ。
着任した年月:2020年10月
着任前の居住地:東京都杉並区
出身地:千葉県野田市
着任前のお仕事:人材会社勤務
揖斐川町の薬草を使ったぎふコーラを開発して、一般販売も始めました。ゆくゆくは岐阜県の他のエリアともコラボしたコーラで、岐阜の文化や歴史を発信していきたいと思っています。
岐阜のいろいろな地域で開催されるワークショップに参加してみたんですが、揖斐川町で薬草の文化に触れて、それがベトナムでの体験とリンクして面白さを感じた、というのが揖斐川町に決めた理由です。
揖斐川町では、ヨモギやどくだみなどをお茶にしたりするのですが、ベトナムにも草を食べることで薬に頼らずに体を整える文化がありました。揖斐川町にもそうした文化が残ってることに興味を惹かれ、揖斐川町の地域おこし協力隊になりました。
教えてほしいという姿勢を素直に表現すると、本当に親身になって教えてくれます。ただ、あくまでもよそ者というポジションは変わらないので、外の人という目線を持ちながらも中に入っていく、そのバランスを取る難しさは感じています。
地域おこし協力隊として一番大切だと思うのは、地域の人たちと共存することです。自分がやりたいことも大事だけど、それが地域のためになっていない喜んではもらえないので、そうすると結果的に自分がやりたいこともできない。そのバランスが大事だなと。
そのためには、どれだけ地域の人たちと“素”で接することができるかが重要だと思います。だから、応募する前にいろんな土地を見て、そこが自分が素直になれる場所かどうかを感じてみてほしいなと思います。
着任した年月:2020年3月
着任前の居住地:ベトナム
出身地:岐阜県大垣市
着任前のお仕事:珈琲関連事業
移住コンシェルジュとして、移住に関する広報やPR、移住希望者に対する仕事、家、補助金等の紹介をしつつ、コミュニティカフェ「blanc」の運営もしています。
具体的には、移住希望者のキャリア面談をして、人材募集をしている企業とマッチングする採用支援をしたり、空き家を回って空き家バンクを運用して移住希望者に物件を紹介したり、移住に関する補助金がいくらまでおりるか把握してお伝えするとか、そういった移住に関わること全般を業務としています。
さかのぼると、自分の裁量で新しいことにチャレンジしたいという思いから、ファンディングベースという会社に入社しました。地域をフィールドにチャレンジできる会社で、最初は豊後高田市に地域おこし協力隊として赴任して、ビーチを活用して観光地にするプロジェクトを3年間手掛けました。
10人ほど若い人が地域に入ってきたのですが、その体験から、都会と地域をつなぐインフラがつくれないかと考えるようになりました。移住を通して、地域を「チャレンジする場」として認知してもらうことができるんじゃないかと思ったんです。
それで、移住コンシェルジュの募集を探して三条市に行き着きました。三条市は、日本一社長が多いまちと言われていて、中小企業が約1,000社あるんですが、この先、20年で700社が倒産するのではと言われています。その理由は後継者不足ですが、地域資産である技術がなくなってしまうのは惜しいので、そうした文化を継承して現代版にアップデートしていく人材を移住コンシェルジュとしてマッチングできたら面白いと考えました。
いま、関係人口から移住支援を通じた起業の後継者育成までを一気通貫で考えるようなことをやっているのですが、シティプロモーションも、観光ツアーづくりも、企業と移住者のマッチング、さらには後継者育成のための教育プログラムまでやりたいですね。
そのうえで、ある程度ノウハウが溜まってきたら、それを他の地域にも展開できるようなモデル化をしていきたいと考えています。モデル化ができれば、もともとやりたかった「地域と都会をつなぐインフラをつくる」ことがある程度できるのではないかと思うんです。
そうやって地域の環境と教育と産業をつなげていって、ベンチャー企業が会社ごと移転したり、起業を考えている人が地域で起業をする、そんな選択肢が生まれていったらいいですね。
着任した年月:2021年4月
着任前の居住地:大分県豊後高田市
出身地:青森県八戸市
着任前のお仕事:新卒:株式会社ROBOT PAYMENT
出身大学:防衛大学校(自衛隊)
文 石村研二